はじめに
アンケート調査で得られる回答データは、広義のリアルワールドデータ(RWD)にあたります。レセプトデータや電子カルテデータのような客観的なデータとは異なり、アンケート調査では患者や介護者、医師やその他の医療従事者などの回答から主観的なデータを収集できます。この主観的データは、特に健康関連QOLや生産性損失、満足度、課題感といった、客観的データでは得られない情報を補完するために重要です。
アンケート調査の対象者の選定
アンケート調査では、創出したいエビデンスに基づき、適切な対象者を選定し、適切な質問を投げかける必要があります。例えば、QOLを評価する場合、患者本人が回答することが一般的ですが、小児や認知機能障害のある患者のように本人が回答することが難しい場合、介護者が代理で回答するケースもあります。QOLの評価には、EQ-5D-5L1Mandy van Reenen, et al. EQ-5D-5L User Guide. EuroQol Research Foundation, 2019年, https://euroqol.org/publications/user-guides, 2024年9月25日 2池田 俊也ほか、日本語版EQ-5D-5Lにおけるスコアリング法の開発、保健医療科学、2015、64(1)、47-55やSF-83Qualitest株式会社、SF-8™(SF8 Health Survey)、Qualitest株式会社ホームページ、https://www.qualitest.jp/qol/sf8.html、2024年10月7日 4福原俊一、 鈴鴨よしみ、健康関連QOL尺度‐SF-8とSF-36、医学の歩み、2005、 213、133-6といった包括的な尺度がよく使用され、その他疾患ごとに特化した尺度も存在します。これらの多くは患者本人が回答することを想定して開発されていますが、代理者による回答でデータを取得することを想定して開発されたものもあるため、アンケート調査の対象者と利用する質問票の対応に注意する必要があります。
サンプルサイズの決め方
アンケート調査のサンプルサイズを決める際には、統計学的な観点と対象者の獲得可能性の観点を考慮します。統計学的な観点では、調査の目的に応じて、結果を統計的に証明できる最低限のサンプルサイズを計算します。具体的な計算方法については専門書で詳細に学ぶことができます。一方で、実際の調査では予算やスケジュールといった現実的な制約から生じる調査対象者の獲得可能性も踏まえて、目標とするサンプルサイズの決定をおこなうことが多くあります。
調査対象者の獲得可能性はアンケート調査を配布する規模や予算と密接に関連します。例えば、患者数の多い疾患であれば、調査会社の提供するアンケートパネルから対象者を容易に獲得できますが、希少疾患の場合には、患者が集まる特定のプラットフォームに協力を依頼する必要があり、調査のための前準備を含め、調査費用や調査期間が増大することがあります。複数のプラットフォームを組み合わせて活用することで、より多くの対象者を確保することも可能ですが、予算やスケジュールとのバランスを考量して判断することが重要です。
- 1Mandy van Reenen, et al. EQ-5D-5L User Guide. EuroQol Research Foundation, 2019年, https://euroqol.org/publications/user-guides, 2024年9月25日
- 2池田 俊也ほか、日本語版EQ-5D-5Lにおけるスコアリング法の開発、保健医療科学、2015、64(1)、47-55
- 3Qualitest株式会社、SF-8™(SF8 Health Survey)、Qualitest株式会社ホームページ、https://www.qualitest.jp/qol/sf8.html、2024年10月7日
- 4福原俊一、 鈴鴨よしみ、健康関連QOL尺度‐SF-8とSF-36、医学の歩み、2005、 213、133-6
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