この記事の概要
日本の医学系研究においては、研究対象者の生命、健康及び人権の保護のために倫理審査が原則必須です。ただし、研究の迅速化・効率化のため、次世代医療基盤法の規定に基づいた匿名加工データベースを利用する際は倫理審査が免除されます。
医学系研究における倫理審査とは
研究計画が倫理指針に沿っているかを審査するプロセスを指します。日本国内で人を対象とする研究を行う際に、研究対象者の生命、健康、人権を守ることが目的です。原則として倫理審査委員会の承認を得る必要があります。
倫理審査委員会と治験審査委員会の違い
どちらも研究の倫理面を審査する点は同じです。ただし、未承認の薬剤や医療機器の承認を得るための治験においては、薬機法や「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」に基づき、治験審査委員会による厳格な審査が定められています。
倫理審査の手続きの流れ
一般的には以下のように進められます。
- 研究計画書の作成
- 倫理審査委員会への申請
- 委員会による審査(専門家や一般の立場を含む委員が倫理的・科学的観点から審査)
- 審査結果の通知
倫理審査が免除されるケース
次世代医療基盤法に基づき、国が認定した事業者が適切に匿名加工した医療情報データベースを研究に利用する場合は免除対象です。このケースでは倫理指針の対象範囲外となり、倫理審査委員会の審査が免除されます。
倫理審査が免除される場合にあえて審査を受けるメリット
主に2つのメリットが考えられます。
- 学術雑誌が論文採択において「倫理審査を経た研究であること」を求める場合に条件を満たせる
- 医療情報データベースに倫理的配慮は必須であり、あえて審査を受けることで研究の信頼性と社会的受容性を高められる
倫理審査の概要
日本国内で実施される人を対象とする生命科学・医学系研究においては原則として「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」1文部科学省、厚生労働省、経済産業省、人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針、厚生労働省ホームページ、2021年、https://www.mhlw.go.jp/content/001077424.pdf、2024年11月22日に基づいて実施することが求められます。同指針は、研究対象者の生命、健康及び人権を尊重して研究を実施するため、研究計画の作成から同意取得、データ管理、結果の公表まで研究全体を網羅した倫理的指針であり、その中で倫理審査委員会(Research Ethics Committee)の審査を受けた研究計画書に従って適正に研究を実施しなければならないことが定められています。
その中でも、まだ承認されていない薬剤・医療機器を用いておこなわれる国の承認を得るための治験では「薬機法」2「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の略称という薬や医療機器全般に関する法律と、これに基づいて国が定めた「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」という規則に基づき治験審査委員会(Institutional Review Board)の審査を受けなければならないことが定められています。

これらの委員会は、医学系研究における倫理的な適切性を確保するための重要なプロセスを担っており、研究の質と安全性を保つために非常に重要です。審査委員会は、研究が実施される前に研究計画を審査し、患者や参加者の生命、健康及び人権が守られることを確認する役割を果たします。
上述の通り人を対象とする生命科学・医学系研究においては倫理審査委員会の審査を受けることが求められていますが、匿名加工情報のみを用いる場合など、倫理審査を必ずしも必要としないケースもあります。しかし、学術雑誌によっては、学術論文の採択の条件として倫理審査を経て実施された研究であることを求めていることがあるため、匿名加工情報を用いたデータベース研究においても倫理審査委員会の審査を受けるケースもあります。また、倫理審査を通じて、研究の信頼性と社会的受容性が高まり、研究結果が広く受け入れられる可能性が高くなります。
- 1文部科学省、厚生労働省、経済産業省、人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針、厚生労働省ホームページ、2021年、https://www.mhlw.go.jp/content/001077424.pdf、2024年11月22日
- 2「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の略称
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