各データベースの特徴と選定について

データベースの選定

製薬企業が研究目的で使用するデータベースとして現時点で最も環境が整備されているのはレセプトデータベースですが、昨今は電子カルテデータベースも整備が進んでいます。データベースごとに特徴があるため、研究に合ったデータベースを選択することが必要です。

本邦において、商用利用可能なデータベースを提供している企業は複数存在しますが、その情報源は医療機関と保険者に大別されます。また、提供されるデータの種類は、電子カルテデータとレセプトデータ(医科レセプト、DPCレセプト、調剤レセプト、など)に分けられます。情報源とデータの種類により各データベースは以下の表のような特徴を持ちます。

表.データベースの特徴

日本で商用利用が可能なデータベースに登録されているデータの項目やデータの規模については、日本薬剤疫学会の健康・医療情報データベース活用委員会による「日本における臨床疫学・薬剤疫学に応用可能なデータベース調査1健康・医療情報データベース活用委員会、日本における臨床疫学・薬剤疫学に応用可能なデータベース調査、日本薬剤疫学会、https://www.jspe.jp/committee/020/0210/、2024年2月20日」の調査結果で確認することができます。これらの情報や各データベースの得手・不得手を考慮し、実施する研究に合ったデータベースを選択することが重要です。判断が難しい場合、過去の類似研究で使用されたデータベースを選択する、あるいは候補とするデータベースに目的とする疾患がどの程度含まれるのかなど、各社に問い合わせた上で比較・検討して選択するといった方法も考えられます。

レセプトデータベースと電子カルテデータベース

従来、製薬企業が使用する商用データベースは、保険者データベースか医療機関データベースのいずれかのレセプトデータベースでした。レセプトデータベースは、診療行為によって発生する請求/支払いベースの情報です。請求に関連しないデータは含まれない、保険者データベースでは非就労人口の多い高齢者のデータは含まれないなどの特徴はありますが、疾患による社会的・経済的負担や新薬の医療経済性の評価を目的とする研究において使用が検討されます。

一方、電子カルテデータベースには、医療機関の日常診療における処置内容や臨床検査値といった情報が含まれます。日本の電子カルテ普及割合は依然として高い水準に至っておらず、普及が進んでいる中・大規模病院を中心としたデータとはなりますが2厚生労働省の医療施設調査によると令和2年の電子カルテシステムの普及割合は一般病院では57.2%。病床規模別に見ると400床以上で91.2%、200~399床で74.8%、200床未満で48.8%と報告されています。医療分野の情報化の推進について、電子カルテシステム等の普及状況の推移、厚生労働省、https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/index.html、2024年2月20日、臨床検査値の情報が重要となる研究において使用が検討されます。現在、電子カルテデータベースの商用利用の環境が整いつつあり、電子カルテデータベースを利用した研究実績とデータ検証の事例が蓄積されれば、研究のアウトカムや患者背景の確認のための臨床検査値が重要な疾患領域においては、使用されるデータベースがレセプトデータベースから電子カルテデータベースへと置き換わる可能性があります。また今後、電子カルテのテキストデータや画像検査結果などが利用できるまでに整備されれば、より一層可能性は広がるものと考えられます。

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    健康・医療情報データベース活用委員会、日本における臨床疫学・薬剤疫学に応用可能なデータベース調査、日本薬剤疫学会、https://www.jspe.jp/committee/020/0210/、2024年2月20日
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    厚生労働省の医療施設調査によると令和2年の電子カルテシステムの普及割合は一般病院では57.2%。病床規模別に見ると400床以上で91.2%、200~399床で74.8%、200床未満で48.8%と報告されています。医療分野の情報化の推進について、電子カルテシステム等の普及状況の推移、厚生労働省、https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/index.html、2024年2月20日