研究デザインの選び方

研究デザインの種類1疫学 ─医学的研究と実践のサイエンス─、Leon Gordis 著、木原 正博 他翻訳、メディカルサイエンスインターナショナル、2010年 2ロスマンの疫学 科学的思考への誘い 第2版、KennethJ. Rothman 著、矢野 栄二 他翻訳、篠原出版新社、2013年

ヒトを対象とした臨床研究は、対象者への介入を行うかによって大きく、介入研究(interventional study)と観察研究(observational study)に分類されます(表1)。

表1. 臨床研究の分類

介入研究は、治療法の効果を調べるために、治療法を与えるかどうか、あるいはその程度を積極的に研究者が変更する研究で、より信頼性の高いデータを得ることを目的に行われますが、時間やコストがかかります。介入の有無による影響を公平に比較するためにランダム割付が検討されます。ランダム化によって、介入の有無以外の要因を各集団にバランスよく振り分けることができます。

観察研究は介入を伴わない研究で、研究対象者に関するデータを観察します。リアルワールドデータベースの活用の進展に伴い、観察研究も拡大しています。

観察研究の種類3疫学 ─医学的研究と実践のサイエンス─、Leon Gordis 著、木原 正博 他翻訳、メディカルサイエンスインターナショナル、2010年 4ロスマンの疫学 科学的思考への誘い 第2版、KennethJ. Rothman 著、矢野 栄二 他翻訳、篠原出版新社、2013年

観察研究は、比較対象を設けるか、また研究の向きによってさらに分類されます(表1)。研究開始時点で曝露情報(治療法など)を測定し、未来に向けてアウトカムを測定する研究を前向き研究(prospective study)、研究開始時点でアウトカムを測定し、曝露情報については過去のデータから測定する研究を後ろ向き研究(retrospective study)といいます。どちらも研究開始時点で測定する場合は横断研究(cross-sectional study)です。前向き研究の代表的な研究デザインとしてはコホート研究、後ろ向き研究の代表的な研究デザインとしてケース・コントロール研究(症例対照研究)があります(表2)。いずれも曝露とアウトカムの関係を確認するために用いられるデザインです。

表2. コホート研究とケース・コントロール研究

コホート研究

注目するアウトカムを生じていないが将来的に生じる可能性のあるAt risk集団を対象として登録します。曝露の有無や種類によって複数のコホートを定義し、未来に向けてアウトカムの発生を追跡・確認し、発生率・リスクを評価できます。時間の経過とともに追跡からの脱落者が生じ、個々の追跡期間の長さが異なるため、アウトカム発生率は発生総数を追跡期間の合計で割って算出します。

前向きにデータを収集する研究では、評価するために充分なアウトカム発生まで追跡を行うため一般的に費用と時間がかかるといわれますが、診療記録などのリアルワールドデータ(RWD)の蓄積があれば、過去を起点としたコホート研究が可能です。

RWDを用いたコホート研究の例として、韓国の大腸がんの発生におけるプロトンポンプ阻害剤(PPI)の長期使用の影響を確認した論文があります5Hwang IC, Chang J, Park SM. Emerging hazard effects of proton pump inhibitor on the risk of colorectal cancer in low-risk populations: A Korean nationwide prospective cohort study. PLoS One. 2017 Dec 7;12(12):e0189114. doi: 10.1371/journal.pone.0189114. PMID: 29216279; PMCID: PMC5720708.。2007年1月1日を基準日とし、曝露情報として基準日前5年間のPPIの累積使用量が、2013年12月31日までの大腸がん発生率に影響するかを、併存疾患、肥満指数、生活習慣等の危険因子で調整した上で、Cox比例ハザード解析を用いて確認したものです。

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