ケース・コントロール研究
注目するアウトカムを生じた集団(ケース)を対象とし、アウトカムを生じていない集団(コントロール)から比較対照集団を抽出した上で、過去の曝露情報を確認します。ケース群とコントロール群の間には、曝露因子以外の違いがないように比較対象集団を抽出することが重要です。
複数の暴露因子について検討可能であるため、アウトカムに関連する要因を探索する場合に適しています。また、有病率が低い疾患や、発症までに時間がかかる疾患はコホート研究で対象とする場合の制約が大きく、ケース・コントロール研究の方が適しています。
RWDを用いた後ろ向きケース・コントロール研究の例として、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の臨床的背景を確認した研究があります1Tokutsu K, Ito K, Kawazoe S, Minami S, Fujimoto K, Muramatsu K, Matsuda S. Clinical characteristics in patients with non-alcoholic steatohepatitis in Japan: a case-control study using a 5-year large-scale claims database. BMJ Open. 2023 Aug 22;13(8):e074851. doi: 10.1136/bmjopen-2023-074851. PMID: 37607790; PMCID: PMC10445376.。2015年4月から2020年3月までに少なくとも1回のNASHエピソードのある患者をケース群とし、同期間に少なくとも1回医療機関を訪問した患者のうち一度もNASHエピソードがなかった患者からコントロール群を無作為抽出したものです。
比較対照集団を選ぶ方法の一つとして、ネステッド・ケース・コントロール研究があります。ケースが発生した時点で未発生者の中からコントロールを抽出する方法で、発生時点と追跡期間の長さについて合致する2つの集団を得ることになります。
研究デザインの検討
リサーチクエスチョンの作成
どのような研究デザインを選択するか検討するにあたっては、まず適切なリサーチクエスチョンの作成が必要です。具体的で実現可能なリサーチクエスチョンを設定する方法として定式化(Patients、Exposure、Control、Outcome〔PECO〕の形で整理する方法)があります(表3)。
P | Patients | 関節リウマチ患者 |
E | Exposure | 分子標的薬A |
C | Control | 分子標的薬B |
O | Outcome | 請求データベースのアルゴリズム(claims-based algorithm)に基づく分子標的薬の有効性 |
研究デザインとエビデンス
以前は、研究デザインによってエビデンスの強さに違いがあり、システマティックレビューやメタアナリシスが最も強く、次いでランダム化比較試験、コホート研究、ケース・コントロール研究、という順であるとする主張(エビデンス・ピラミッド)がありました。しかしその考えは修正され、方法の妥当性によってはコホート研究のエビデンスがランダム化比較試験のエビデンスを上回ったり、ケース・コントロール研究がコホート研究を上回ったりする場合もありえるとされています*5。つまり、リサーチクエスチョンに合致した研究デザインを採用することで、十分なエビデンスを主張することができます。また、選択バイアス2対象者を選択する過程から生じる誤差で、研究への参加に関わる要因と関連する誤差。例えば、健診受診者の方が未受診者より日常的に健康な食習慣への関心が高い場合に生じうる。、情報バイアス3研究対象に関する情報が誤っている、あるいは収集方法が誤っている場合に生じる誤差。誤分類や想起バイアスが知られる。といった、研究のデザインや実施・解析の段階で系統的に発生する誤差について、研究計画の段階で仮説・推測に基づきコントロールすることが重要です。
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