医学系研究における患者同意の取得

はじめに

人を対象とする医学系の研究においては、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」1文部科学省、厚生労働省、経済産業省、人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針、厚生労働省ホームページ、2021年、https://www.mhlw.go.jp/content/001077424.pdf、2024年11月26日(以下、指針)に基づき研究対象者の尊厳及び人権を守ることが求められます。同指針および個人情報保護法に基づき、研究を実施する際には研究対象者から書面により同意を取得することが義務付けられており、特に自発的な意思に基づいた合意を確保することが重要です。本稿では、同意取得に関する重要なポイントを整理して解説します。

医学系研究における患者同意の取得方法

同意については指針に「インフォームド・コンセント」の手続きが厳密に定められています。例えば、ある疾患の新薬の臨床試験に対象者を組み入れる際は、研究計画書の内容を踏まえた同意説明文書に基づき、予想される効果や副作用の説明をした後に同意を取得する必要があります。一方、疾患の治療満足度や課題を問うアンケート調査など、侵襲や介入を伴わない研究では厳密なインフォームド・コンセントは必要とされませんが、個人情報保護法の趣旨に従った適切な同意を取得することが求められます。説明されるべき内容についても規定されており、研究の目的、方法、リスク、利益などについて十分に理解した上で、必要な範囲の同意を取得する必要があります。

ウェブアンケート調査などではインターネットを介した同意取得も許容されており、指針では電磁的方法と呼称されます。この場合、本人確認をおこなうこと、説明内容に対して質問できるよう問い合わせ窓口を設置すること、同意後も説明文書を容易に閲覧できるよう、PDFで保存できるようにする、ウェブサイトに掲示するなどの措置が必要です。

未成年者、あるいは成年であっても認知能力に制約があるなどインフォームド・コンセントを与える能力を欠くと判断される者を対象とする場合には、保護者や代理人からの代諾を取得することになります。ただし、未成年者であっても16歳以上である場合には、本人からの同意を取得することが求められるため、注意が必要です。

データの利用目的と同意範囲

前述の通り、研究対象者からの同意は、データの利用目的と同意範囲が明確でなければなりません。例えば、ある臨床試験において、取得項目を追加する、第三者への提供をおこなうなどの研究計画の変更をおこなった場合、当初取得した同意の範囲を超えるため、改めて同意を取得することが必要です。

前述の通りインフォームド・コンセントでは説明するべき内容が厳格に規定されていますが、アンケート調査などでも同意取得の段階で、利用目的、共有の範囲、第三者提供の可能性について明確に記載し、倫理審査委員会の審査を受けておくことで、適切に研究を実施することができます。