医学系研究における患者同意の取得

オプトアウト

レセプトや電子カルテなど、患者から取得した情報のみを用いて研究を実施しようとする場合で適切な同意を取得することが困難であると認められる場合、オプトアウトと呼ばれる方法での同意の取得が許容されています。オプトアウトは、対象者に対しデータ利用についての通知を行い、利用を拒否する意思が示されない場合に限りデータ利用が可能となる仕組みです。これに対して、対象者が積極的に「参加する」と明示的に同意した場合にのみデータ利用が可能となる同意取得方法は、オプトインと呼ばれます。

オプトアウトによる同意を取得する場合は、個別に対象者に説明をおこなう必要はありませんが、あらかじめデータ利用の目的や方法を対象者が容易に知り得る状態に置くことが求められます。例えば、文書の配布や、病院などでは対象者が確認できる待合室等へのポスターの掲示などが考えられます。明示的に対象者が拒否した場合は当該対象者の情報を収集することは認められませんが、研究集団の特性を把握するための人口学的特性の集計に組み込むことは認められます。

次世代医療基盤法1内閣府、次世代医療基盤法について、内閣府ホームページ、https://www8.cao.go.jp/iryou/gaiyou/gaiyou.html、2024年11月22日では利用情報の利活用を促進するため、セキュリティ要件などを審査した上で国が認定した事業者がオプトアウトにより医療情報を収集することが認められています。

プライマリーデータとセカンダリーデータ

プライマリーデータと患者同意

プライマリーデータとは、前向きな臨床試験やアンケート調査などを通して新たに収集されるデータを指し、その利用には患者の明示的な同意が求められます。特に、同意書には研究の目的やデータの利用範囲、保存期間、データが第三者に提供される可能性などが記載されるべきです。例えば、新薬の有効性の調査のためのデータ収集が挙げられます。この場合、患者は自身のデータがどのように使われるかを理解し、それに合意した上で参加する必要があります。また、研究目的が副作用の調査などに変更される場合には、再度同意を求める手続きが求められることもあります。

セカンダリーデータと患者同意

セカンダリーデータとは、既存のデータを指し、例えば電子カルテデータやレセプトデータ、過去の研究データなどが含まれます。前述の通り、研究などで取得した情報は事前に提示して同意を取得した範囲で使用することができます。従って、最初の同意書で二次利用について同意を取得している場合は、再同意を必要としないこともあります。しかし、利用目的が当初の範囲を超える場合などには再同意の取得が必要です。一方で商用のデータベースの場合、個人情報保護法により定められた手順で匿名加工情報に加工されていることから、対象者の再同意を必要とせず購入して用いることが可能です。例えば、糖尿病患者のデータを分析して新たな薬効を調べる場合、商用の電子カルテデータやレセプトデータなどの既存データを用いることで、新たな同意取得をせずに研究が可能となります。さらに、次世代医療基盤法に基づく認定事業者には、個人情報を用いて複数のデータソースのデータを突合した上で匿名加工情報に加工することが認められています。

さいごに