はじめに
疫学の専門用語としての「バイアス」は「結果や推論の真実からの系統的なずれ」1疫学辞典 第5版、財団法人日本公衆衛生協会、Porta M(編) 、日本疫学会(訳)、2010年 2ロスマンの疫学 科学的思考への誘い 第2版、KENNETH J.ROTHMAN、矢野 栄二 他監訳、篠原出版新社、2013年、「内的妥当性を危うくするもの」3ロスマンの疫学 科学的思考への誘い 第2版、KENNETH J.ROTHMAN、矢野 栄二 他監訳、篠原出版新社、2013年などと定義されています。バイアスを重要視する理由としては、バイアス、つまり系統誤差を伴う場合には、仮に測定値が真の値とは離れた値の周辺で変動したとしても測定者はそれを把握できないためです。偶然誤差と違い、バイアスは対象者数を増加させても減らすことはできず、その結果むしろ間違った情報を測定することになりかねません4疫学辞典 第5版、財団法人日本公衆衛生協会、Porta M(編) 、日本疫学会(訳)、2010年 5若井 建志、大野 良之、バイアスの種類とその対策(1)、日本循環器管理研究協議会雑誌、1999、34 (1)、42-45。データベース研究のように後ろ向きデザインが多い観察研究ではバイアスが入り込みやすいため、ここでは製薬企業のメディカルアフェアーズ(MA)部門が特に把握しておく必要のあることとして、データベース研究で注意すべきバイアスについて紹介します。他にも、アンケート調査での同意バイアス・想起バイアスや、システマティックレビュー実施の際に検討する出版バイアスなどがありますが、ここでは取り上げません。
交絡とは
交絡は、データベース研究のデザインにおいて中心的な課題であり、曝露効果が他の変数の効果と行動されることにより生じるバイアスを指します6疫学辞典 第5版、財団法人日本公衆衛生協会、Porta M(編) 、日本疫学会(訳)、2010年。調整すべき交絡因子の条件として、アウトカムに影響を与えること、曝露に影響を与えること、曝露とアウトカムの因果経路の中間にないこと、があります。交絡によるバイアスの対処方法としては研究デザインによる交絡制御と解析による交絡調整があります7疫学辞典 第5版、財団法人日本公衆衛生協会、Porta M(編) 、日本疫学会(訳)、2010年 8ロスマンの疫学 科学的思考への誘い 第2版、KENNETH J.ROTHMAN、矢野 栄二 他監訳、篠原出版新社、2013年 9これからの薬剤疫学 リアルワールドデータからエビデンスを創る、佐藤 俊哉、山口 拓洋、石黒 智恵子、朝倉書店、2021年。
- 1疫学辞典 第5版、財団法人日本公衆衛生協会、Porta M(編) 、日本疫学会(訳)、2010年
- 2ロスマンの疫学 科学的思考への誘い 第2版、KENNETH J.ROTHMAN、矢野 栄二 他監訳、篠原出版新社、2013年
- 3ロスマンの疫学 科学的思考への誘い 第2版、KENNETH J.ROTHMAN、矢野 栄二 他監訳、篠原出版新社、2013年
- 4疫学辞典 第5版、財団法人日本公衆衛生協会、Porta M(編) 、日本疫学会(訳)、2010年
- 5若井 建志、大野 良之、バイアスの種類とその対策(1)、日本循環器管理研究協議会雑誌、1999、34 (1)、42-45
- 6疫学辞典 第5版、財団法人日本公衆衛生協会、Porta M(編) 、日本疫学会(訳)、2010年
- 7疫学辞典 第5版、財団法人日本公衆衛生協会、Porta M(編) 、日本疫学会(訳)、2010年
- 8ロスマンの疫学 科学的思考への誘い 第2版、KENNETH J.ROTHMAN、矢野 栄二 他監訳、篠原出版新社、2013年
- 9これからの薬剤疫学 リアルワールドデータからエビデンスを創る、佐藤 俊哉、山口 拓洋、石黒 智恵子、朝倉書店、2021年
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