医学系後ろ向き研究における背景マッチング

背景マッチングの意義と必要性

医科レセプトデータベースや電子カルテデータベースなど、いわゆるリアルワールドデータ(RWD)を活用した後ろ向き研究において、患者背景のマッチングは研究結果の信頼性や頑健性を高めるために重要な手法です。これらのデータベースは広範な患者情報を提供しますが、観察データであるため、治療群と対照群の患者背景に偏りが生じやすいという特性があります。この偏りが研究結果に影響を与えるリスクを最小限に抑えるため、適切なマッチングをおこなう必要があります。

たとえば、治療効果を評価する際、年齢や性別、基礎疾患の有無などが治療選択やアウトカムに影響を与える場合があります。これらの要因が均衡していない場合、治療効果を正確に評価することが困難になります。背景マッチングを通じて、治療群と対照群の間でこれらの要因を均等化することで、研究結果の解釈をより正確にすることができます。

マッチングの手法

背景マッチングには、さまざまな手法が用いられます。その中でも代表的なものを以下に示します。

正確マッチング(Exact Matching)

正確マッチングは、年齢や性別などの要因が完全に一致する患者同士をペアリングする手法です。この方法は単純で分かりやすい一方で、マッチング可能な患者が減少し、サンプルサイズが大幅に縮小するリスクがあります。

図1. 正確マッチングの概念
1原 正彦、解析応用編 1. 傾向スコア(プロペンシティスコア)propensity score (PS) を用いた解析方法、臨床医のためのRコマンダーによる医学統計解析マニュアルホームページ、https://rcommanderdeigakutoukeikaiseki.com/propensity_score.html、2025年2月17日をもとに株式会社ヘルスケアコンサルティングで作成)

傾向スコアマッチング(PSM:Propensity Score Matching)