レセプトデータベースの特徴
レセプトデータとは診療報酬請求データとも言われ、医療機関が診療報酬を保険者に請求する目的で、所定の書式に沿って診療記録をもとに生成されるデータです。そのため、診療記録に関する情報の全てではなく、請求に関する情報に絞り込まれており、また所定のフォーマット・項目に従うため、例えば疾患名・診療行為・医薬品などは予め定義された名称やコードに分類されています1社会保険診療報酬支払基金、レセプト電算処理システム 電子レセプトの作成手引き-医科-(令和6年9月版)、社会保険診療支払基金、2024年、https://www.ssk.or.jp/seikyushiharai/iryokikan/iryokikan_02.files/jiki_i01.pdf、2025年8月15日 2社会保険診療報酬支払基金、レセプト電算処理システム 電子レセプトの作成手引き-DPC-(令和6年9月版)、社会保険診療支払基金、2024年、https://www.ssk.or.jp/seikyushiharai/iryokikan/iryokikan_02.files/jiki_d01.pdf、2025年8月15日 3社会保険診療報酬支払基金、レセプト電算処理システム 電子レセプトの作成手引き-歯科-(令和6年9月版)、社会保険診療支払基金、2024年、https://www.ssk.or.jp/seikyushiharai/iryokikan/iryokikan_02.files/jiki_s01.pdf、2025年8月15日 4社会保険診療報酬支払基金、レセプト電算処理システム 電子レセプトの作成手引き-調剤-(令和6年9月版)、社会保険診療支払基金、2024年、https://www.ssk.or.jp/seikyushiharai/iryokikan/iryokikan_02.files/jiki_t01.pdf、2025年8月15日。
レセプトデータに基づく請求の前には、社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会などの審査支払機関による内容の審査がおこなわれます。この審査は、国が定めた保険診療ルール、医薬品の薬価基準、医薬品・医療機器の承認内容に基づいて適正に算定されているか、などの視点で実施され、適正でないと判断されると各医療機関に差し戻されて修正が求められます5社会保険診療報酬支払基金、診療報酬の審査・支払業務の流れ、社会保険診療支払基金、https://www.ssk.or.jp/smph/shinryohoshu/gyomuflow/index.html、2025年8月15日 6社会保険診療報酬支払基金、審査に関するQ&A、社会保険診療支払基金、https://www.ssk.or.jp/goshitsumon/goshitsumon_02.html、2025年8月15日。差し戻しを最小化するために、医療機関ではレセプトデータ作成の際に既存のルールや文書との整合性を重視します。
一方で、上記の既存の保険診療ルールなどと必ずしも関係しない情報については、データ登録の要否や基準、内容が医療機関によって異なる場合があります。

レセプトデータベースの限界
レセプトデータを疫学研究などに使用する際には、データが請求目的で作成されているという性質上、いくつかの限界があります。以降では、疫学研究における重要ないくつかの視点からその主な限界を示します。
疾患の特定における限界
レセプトデータでは、疾患は日本独自の7桁の傷病名コードで記録され、国際的な標準コードであるICD-10とも対応付けられるようになっています。しかし、どのような症状や所見が認められた場合にどの傷病名を選択すべきかの厳密な基準はないため、必ずしも同じ傷病名コードが同じ病態に対応するかは保証されていません。最も医療資源を投入した疾患には主傷病フラグを付与するように推奨されているものの、同一月に複数の疾患に主傷病フラグが付与されるケースは少なくありません。また、検査目的でも傷病名コードを登録する可能性や、疑いフラグを付与することを忘れる可能性も指摘されています7岩上将夫ら、「日本における傷病名を中心とするレセプト情報から得られる指標のバリデーションに関するタスクフォース」報告書、薬剤疫学、2018年、23巻2号、95~123。
- 1社会保険診療報酬支払基金、レセプト電算処理システム 電子レセプトの作成手引き-医科-(令和6年9月版)、社会保険診療支払基金、2024年、https://www.ssk.or.jp/seikyushiharai/iryokikan/iryokikan_02.files/jiki_i01.pdf、2025年8月15日
- 2社会保険診療報酬支払基金、レセプト電算処理システム 電子レセプトの作成手引き-DPC-(令和6年9月版)、社会保険診療支払基金、2024年、https://www.ssk.or.jp/seikyushiharai/iryokikan/iryokikan_02.files/jiki_d01.pdf、2025年8月15日
- 3社会保険診療報酬支払基金、レセプト電算処理システム 電子レセプトの作成手引き-歯科-(令和6年9月版)、社会保険診療支払基金、2024年、https://www.ssk.or.jp/seikyushiharai/iryokikan/iryokikan_02.files/jiki_s01.pdf、2025年8月15日
- 4社会保険診療報酬支払基金、レセプト電算処理システム 電子レセプトの作成手引き-調剤-(令和6年9月版)、社会保険診療支払基金、2024年、https://www.ssk.or.jp/seikyushiharai/iryokikan/iryokikan_02.files/jiki_t01.pdf、2025年8月15日
- 5社会保険診療報酬支払基金、診療報酬の審査・支払業務の流れ、社会保険診療支払基金、https://www.ssk.or.jp/smph/shinryohoshu/gyomuflow/index.html、2025年8月15日
- 6社会保険診療報酬支払基金、審査に関するQ&A、社会保険診療支払基金、https://www.ssk.or.jp/goshitsumon/goshitsumon_02.html、2025年8月15日
- 7岩上将夫ら、「日本における傷病名を中心とするレセプト情報から得られる指標のバリデーションに関するタスクフォース」報告書、薬剤疫学、2018年、23巻2号、95~123
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