慢性腎臓病と臨床検査値-推算糸球体濾過量による腎保護作用の評価

CKDを対象としたデータベース研究

既存のデータベースとCKD研究

このように、CKDはeGFRと蛋白尿という臨床検査値によってアウトカムが定義されています。一般的にデータベース研究で広く用いられているレセプト由来のデータベースには臨床検査値が含まれていないため、CKDを対象としたデータベース研究をおこなうには強い制約がありました。実際に過去に実施されたCKDを対象におこなわれたデータベース研究は健康診断のデータベースや電子カルテデータベースなど、臨床検査値を含むデータベースでおこなわれています1Takeuchi M, Shinkawa K, Yanagita M, Kawakami K. Prevalence, recognition and management of chronic kidney disease in Japan: population-based estimate using a healthcare database with routine health checkup data. Clin Kidney J. 2021;14(10):2197-2202. 2Hirose N, Tsujimoto N, Katayose T, Chin R. Utilization of glucagon-like peptide-1 receptor agonists and changes in clinical characteristics in patients with type 2 diabetes by chronic kidney disease stage in Japan: A descriptive observational study using a nationwide electronic medical records database. Diabetes Obes Metab. 2022;24(3):486-498.。近年、厚生労働省の支援を受けて大学病院を中心に医療機関間の医療情報交換の標準であるStandardized Structured Medical Information eXchange 2(SS-MIX2)を用いて臨床検査値や処方情報を収集したJ-CKD-DBが構成され研究成果が発表されていますが、企業が研究に用いることは難しいのが現状です3J-CKD-DB事務局、J-CKD-Database、J-CKD-Database ホームページ、2025年、https://j-ckd-db.jp/、2025年10月1日

次世代医療基盤法データとCKD分析および研究

CKDは長期に数多くの患者を観察する必要があり、前向きの試験をおこなうためには多額の費用を要することから、データベース研究に適した疾患であるといえます。しかし、CKDを対象としたデータベース研究をおこなうためには、臨床的なアウトカムを評価することが欠かせません。そのため、電子カルテデータベースなど臨床検査値を持つデータベースが必要です。臨床検査値データを用いることで、CKDの進行とともに発生する合併症についても臨床実態を評価することが可能となります(図1)。

図1. GFR区分毎のヘモグロビン値の分布(n=4,942)
GFR区分はeGFRに基づき分類した。腎性貧血治療ガイドラインにおいて、CKDに伴う腎性貧血の目標ヘモグロビン値とされる11 g/dL未満を貧血とみなした。

近年ではCKD、特にIgA腎症を対象とした新規薬剤の開発が盛んにおこなわれており、CKDの進行を抑制することにより透析導入を回避または遅延することによる医療費へのインパクトが注目されています。このような医療経済学的なインパクトを評価するためには医療費を持つレセプトデータを用いる必要があります。次世代医療基盤法の下では、電子カルテデータとレセプトデータという複数のデータを突合した上で匿名化することができるため、同じ集団を対象とした単一の情報源を用いて臨床検査値と医療費を同時に評価することができるようになりました。このことは、特に費用対効果研究をおこなう上でメリットがあります。次世代医療基盤法データを用いることで、CKDは研究がさらに進展することが期待されます。

  • 1
    Takeuchi M, Shinkawa K, Yanagita M, Kawakami K. Prevalence, recognition and management of chronic kidney disease in Japan: population-based estimate using a healthcare database with routine health checkup data. Clin Kidney J. 2021;14(10):2197-2202.
  • 2
    Hirose N, Tsujimoto N, Katayose T, Chin R. Utilization of glucagon-like peptide-1 receptor agonists and changes in clinical characteristics in patients with type 2 diabetes by chronic kidney disease stage in Japan: A descriptive observational study using a nationwide electronic medical records database. Diabetes Obes Metab. 2022;24(3):486-498.
  • 3
    J-CKD-DB事務局、J-CKD-Database、J-CKD-Database ホームページ、2025年、https://j-ckd-db.jp/、2025年10月1日