がんと臨床検査値-血液毒性の評価

想定される限界と克服のための工夫

がん薬物療法に伴う血液毒性を電子カルテ由来DBで捕捉する際には、一定の限界が伴います。ここでは、その限界と、それらを克服するための工夫の例を対応付けて示します。

想定される限界克服のための工夫(例)
検査間隔のばらつき(例:外来主体で 最小・最大値を補足できていない可能性)測定頻度別の層別解析をおこなう。
逆確率重み付け(IPW)で観測機会の偏りを補正する。
単位の不統一(例:/µL と ×10^9/L)、コードの不統一(例:コード改定)単位換算テーブルを用いて統一単位に換算する。
検査コードの新旧対応表などを整備し、名寄せする。
ベースラインの不確実性(例:検査未実施や他院での採血などで欠測・不明)欠測の無い集団(complete-case)で解析する。
多重代入法で補完する。
ベースライン期間を延長する。(例:7日間 → 28日間)
支持療法の交絡(G-CSF・輸血後の測定値の歪み)投与後72時間は判定から除外するなどのルールを適用する。
支持療法の実施有無のフラグを共変量として投入する。
表2. 想定される限界と克服のための工夫(例)

総括:電子カルテ由来DBで血液毒性を解析する意義

血液毒性は、アウトカムを左右する重要な安全性事象です。電子カルテ由来DBの検査値テーブルを用いてCTCAEに準拠したグレード化を実装し、処方・投与実績データ(レジメン、投与日、用量)と連結することで、支持療法(例:G-CSF、輸血、抗菌薬)や治療変更(用量減量・休薬・延期・中止)との関係を定量化できます。検査頻度のばらつきや単位揺れなどの限界はありますが、適切な前処理、感度分析を組み合わせることで、現実世界の治療下における血液毒性のリスク管理と相対用量強度(RDI)や最適なレジメン選択に資する示唆が得られます。