標準化を支えるガイドラインと今後の展望
医療情報データベースの標準化と適切な利活用を図るために、様々なガイドラインが整備されています。国際的には、ICH1International Counsil for Harmonization of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use: 医薬品規制調和国際会議やISO2International Organization for Standardization: 国際標準化機構によるデータ標準や、観察研究の質を担保するためのSTROBE、RECORDなどの報告ガイドラインが、研究成果の透明性向上に寄与しています。そのような中で標準化された意義が大きい例として医薬品の副作用電子的報告、すなわち個別症例安全性報告があります。技術的な標準としては上記のHL7が取りまとめ、ガイドラインとしてはICHのE2BとM2から発表されています。これをもとに各国でデータベース化され、FDAではFAERS3FDA Adverse Event Reporting Systemとして、日本のPMDAではJADER4Japanese Adverse Drug Event Report databaseとして提供され、副作用のシグナル検出(いわゆる仮説形成の役割)として、医薬品のリスクマネジメントプラン(Risk Management Plan: RMP)の重要な情報源となり、日常業務として解析される程になっています。
さらにICH M14として「医薬品の安全性評価においてリアルワールドデータを活用する薬剤疫学調査の計画、デザイン、解析に関する一般原則」も2025年9月4日に最終ガイドラインが発表され、近々国内においても通知が出されるものと思われます。加えて2025年11月にシンガポールで開催されたICHにて、新たなワーキンググループとしてE23 「医薬品の有効性に関する規制上の意思決定におけるリアルワールドエビデンス(Real World Evidence: RWE)の使用に関する考察」が立ち上げられ、安全性のみならず有効性についてもガイドライン作成が始まりました。
今後、AIや機械学習を用いた解析が進展するにつれ、標準化の重要性はさらに高まると考えられます。高度な解析手法ほど、入力データの質や定義の一貫性に強く依存するからです。医療情報データベースにおける標準化は、単なる技術的作業ではなく、医療の質向上と社会的意思決定の信頼性を支える基盤であることから、その意義を理解し、ガイドラインに基づいた運用を積み重ねていくことが重要となります。

東京大学大学院医学系研究科 特任教授
小出 大介
こいで だいすけ
- 1International Counsil for Harmonization of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use: 医薬品規制調和国際会議
- 2International Organization for Standardization: 国際標準化機構
- 3FDA Adverse Event Reporting System
- 4Japanese Adverse Drug Event Report database
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