2. 観察研究における代表的な3つのバイアス
ランダム化比較試験では、治療や曝露を無作為に割り付けることにより、既知・未知の交絡因子が両群で均衡します。そのため、因果効果の推定において後述する交絡によるバイアスが最小化されます。
一方、観察研究では曝露や介入が臨床的な判断や患者背景に依存するため、交絡を避けることができません。そのため、観察研究では、デザイン段階および解析段階において慎重に生じうるバイアスについて検討し、対策を考える必要があります。
観察研究におけるバイアスは大きく「選択バイアス」「情報バイアス」「交絡」の3つに分類されます。
(1) 選択バイアス(selection bias)
選択バイアスとは、研究対象者の選択過程に偏りが生じ、結果的に対象集団が本来の標的集団を代表しなくなることによって生じる系統誤差です。
一例として、ケースコントロール研究において曝露の有無に関連する条件でケースやコントロールを抽出した場合、オッズ比が過大あるいは過小に推定されることがあります。例えば、特定の降圧薬と乳がんの関連を検討したケースコントロール研究において、コントロール群から心臓手術歴のある患者を選択的に除外してしまうと降圧薬使用割合が見かけ上低下します。そのため、その降圧薬と乳がんの関係について、正の効果が過大に見積もられる可能性があります。
また、ヒストリカルコホート研究で頻発するのが不死時間バイアス(immortal time bias)です。これは、曝露群に分類されるまでの「死亡しえない期間(immortal time)」を誤って解析に含めることで、曝露群の生存期間を過大評価してしまうものです。これを避けるための手法として、事前に定めた時点(ランドマーク)で群を固定し、ランドマーク時点から追跡をおこなうランドマーク解析が1つの手段となります。
(2) 情報バイアス(information bias)
情報バイアスは、研究対象に関する情報が不明であったり、誤っていたりするために発生する系統誤差です。
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