Medical Educationの位置づけとニーズ
医療従事者は常に医学的知識をアップデートする必要に迫られています。そのため製薬企業は、以前から医療従事者へMedical Education(ME)プログラムを提供してきました。近年その整備が進み、日本製薬工業協会が発出する手引き1日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 メディカルアフェアーズ部会、メディカルアフェアーズ部門が行う『医学・科学的情報提供』に関する手引き、日本製薬工業協会ホームページ、2022 年、https://www.jpma.or.jp/information/evaluation/results/allotment/jtrngf00000008wb-att/KT5_MA_202212.pdf、2024年2月22日において、MEは製薬企業メディカルアフェアーズ(MA)部門が主管的に担う行為と明確に定義されました。核酸医薬などの新規モダリティの登場による医療の複雑化も弾みとなり、MA部門がMEプログラムを提供する機会は増えつつあります。
しかし、MEプログラムの展開にあたっては、MA部門担当者の迷いが生じやすいといえます。対象者や場面に応じた適切なチャネルの選択が求められるためです。
関連する法規制を遵守しながらMEプログラムの効果を最大化するためには、どのような視点でチャネルを選択すればよいのでしょうか。
4つの代表的MEチャネル:各チャネルのPros/Cons
MEプログラムの発信、提供手段として想定される4つの代表的チャネル2村田 洋子ほか、ポジションペーパー:製薬企業のメディカルアフェアーズ部門が実施するメディカルエデュケーションの意義と実践、PMDRS、2021、52(8)、649-656があります(表1)。それぞれの特徴と選択時の留意点を述べます。
チャネル | Pros | Cons | プログラム内容例 |
---|---|---|---|
①学会共催セミナー、シンポジウム | 多くの専門医を 集客可能 | 開催時期・頻度の調整不可 | ガイドラインなど、 学会指標の解説 |
②製薬企業主催のセミナー・ワークショップ | ・開催時期、頻度、 形態などを調整可能 ・聴講者の情報を 取得しやすい | 集客力に限界がある | ・治療法の最新情報 ・症例解説 (※業界規制に準拠) |
③関連団体とのコラボレーションイベント | 製薬企業の社会的責任の面から重要 | 関連団体との調整・配慮が必要 | ・疾患の早期発見、 早期治療に関する市民向け啓発セミナー ・看護師、薬剤師への啓発セミナー |
④デジタルコンテンツ配信(セルフ・ラーニング) | ・対面のコンタクト 不要で、効率的かつ 広範に情報伝達可能 ・さまざまな形態で 展開可能 | 効果検証やフォローの体制整備が重要 | がん領域の最近の医科学的知見に関するオンデマンド動画 |
① 学会共催セミナー、シンポジウム
専門医が集まる場で広く情報伝達することが可能ですが、開催時期や頻度は限られています。そのため、テーマや内容の選定が重要です。また、共催学会の規模によって聴講者へのインパクトが変わるため、エリア戦略に合わせて共催先を選定する必要があります。
② 製薬企業主催のセミナー・ワークショップ
開催時期・頻度・形態などを戦略に合わせて調整可能で、聴講者のさまざまな情報も取得しやすく、効果検証が容易になると考えられます。しかし、製薬企業主催イベントへの参加を控える医療従事者もいるため、集客力に限界があります。聴講者の興味を引き付け、バイアスのない内容を展開するために、演者の特性(専門領域、話術、コンプライアンス意識など)に留意して、演者を選定することが重要です。
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