パブリッシングの目的と概要

パブリッシングの目的

研究で創出したエビデンスを本当に価値あるものとするためには、創出したエビデンスを医師などの医療従事者に向けて適切に発信・提供し、認識・活用してもらう必要があります。学会発表や論文発表といったパブリッシング活動は、創出したエビデンスを適切に発信・提供するための手段のひとつとして有効です。

学会発表や論文発表では、抄録や論文の投稿時にその分野の専門家が行う査読により採択/非採択の判断がなされる場合があります。そのため、査読を経て発表された内容は第三者の客観的な視点から適切と評価されたと考えることができます。但し、近年ではオープンアクセス1学術雑誌に掲載された論文を無料でインターネット上に公開することを指します。従来は読者が投稿先に購読料を支払っていましたが、オープンアクセスの場合は著者が投稿先に掲載料を支払います。公的な研究費を用いて実施された研究の場合、オープンアクセス化が義務付けられていることがあります。化の進展とともに、発表することで逆に信頼を失う参加費・掲載料を目的としたハゲタカ学会・ハゲタカジャーナル2参加費を目的とした粗悪な学会や、掲載料を目的として運営される、十分な査読を行わない粗悪な学術雑誌のことを指します。も存在するため、発表先は慎重に選択することが重要です。

学会発表

発表先として、創出したエビデンスをメッセージとして届けたい医師などの医療従事者が多く所属する専門学会を選択します。学会発表のためには、研究内容を抄録としてまとめ、学会開催の半年程度前に設定された締め切りまでに演題登録を申請する必要があります。抄録は学会が選定した査読者による査読が行われて、演題を採択するか否かが判断されます。演題が採択された場合には、学会当日に10分程度の発表と質疑応答を行います。

学会発表ではオーディエンスは限られますが、発表と質疑応答を通して反応を直接確認できるという利点があります。また、発表時間が限られているため、創出したエビデンスの概要を学会発表で報告し、その詳細は学術論文として発表する方針がとられることもあります。

論文発表

創出したエビデンスをもとに論文を作成し、学会の機関誌や各領域の専門誌などの学術雑誌に投稿します。学会発表に比べ、公表までの難度は高く、時間を要しますが、より多くの医師などの医療従事者に向けて、創出したエビデンスに関する情報を発信・提供する効果が期待できます。 投稿先の選定に際しては、インパクトファクター(IF)3ある学術雑誌がその分野で持つ影響力の指標です。具体的にはその雑誌に掲載された論文が1年あたりに引用される回数の平均値を指し、大きいほどその分野での影響力が相対的に大きいことになります。、採択率、アクセプトされるまでの期間などいくつか考慮するべき点があります。IFが高い雑誌は一般的に採択率が低いため、事前に投稿先に掲載可能性を問い合わせることも有効です。時間的な余裕がある場合は、IFの高い学術雑誌に挑戦し、リジェクトされたら投稿先を変更するという方針をとることも可能です。投稿先によっては迅速査読を受け付けている場合もあるため、投稿先の選定にあたっては候補となる雑誌の投稿規定を確認する必要があります。

  • 1
    学術雑誌に掲載された論文を無料でインターネット上に公開することを指します。従来は読者が投稿先に購読料を支払っていましたが、オープンアクセスの場合は著者が投稿先に掲載料を支払います。公的な研究費を用いて実施された研究の場合、オープンアクセス化が義務付けられていることがあります。
  • 2
    参加費を目的とした粗悪な学会や、掲載料を目的として運営される、十分な査読を行わない粗悪な学術雑誌のことを指します。
  • 3
    ある学術雑誌がその分野で持つ影響力の指標です。具体的にはその雑誌に掲載された論文が1年あたりに引用される回数の平均値を指し、大きいほどその分野での影響力が相対的に大きいことになります。