メディカルアフェアーズ機能への期待と役割

日本の製薬企業におけるメディカルアフェアーズ(MA)の在り方は、日本製薬工業協会が2019年に策定した「メディカルアフェアーズの活動に関する基本的考え方」(以下、「考え方」)1日本製薬工業協会、メディカルアフェアーズの活動に関する基本的考え方、日本製薬工業協会ホームページ、2019年、
https://www.jpma.or.jp/english/reports/drug_evaluation_committee/eplg5k0000000ekc-att/ma-jp_20190401.pdf、2024年4月10日
が基本になっていると言えます。「考え方」では、MA活動とは疾患やその診断・治療における医学・科学的価値の高いエビデンスに基づき社内外のステークホルダーとの交流を行うこととされています。MA活動が求められるようになった背景としては、①臨床研究に関する不正・不適切な情報提供による製薬企業に対する不信感、②エビデンスに基づく医療(Evidence Based Medicine)の進展が挙げられています。いち早く製薬企業と医療従事者とのコミュニケーションが規制された米国では日本よりもMA活動が先行しており、製薬企業がMA活動に費やす予算は増加傾向にあります2Werling K, Carnell H, McCormick H. Focus on Life Science Compliance: The Evolution of Medical Affairs Departments. AHLA Connections. November 2011:14-18.。日本でもMA部門で活動するメディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)の人数は増加傾向にあります3森次 幸男ほか、製薬企業におけるメディカル・サイエンス・リエゾンの業務に関する調査―アンケート調査結果2017―、医薬品情報学、2018、20(3)、156-172

具体的なMA部門の役割として「考え方」では、①アンメットメディカルニーズ把握②メディカルプラン作成③エビデンスの創出④医学・科学的情報の発信・提供、が挙げられています4日本製薬工業協会、メディカルアフェアーズの活動に関する基本的考え方、日本製薬工業協会ホームページ、2019年、https://www.jpma.or.jp/english/reports/drug_evaluation_committee/eplg5k0000000ekc-att/ma-jp_20190401.pdf、2024年4月10日。これらはすべて「考え方」で定義されている「すべての患者さんへ最適な医療を届ける」というミッションを達成するために行われるものです。最適な医療、にはいろいろな定義があり得ますが、定義されたMA部門の役割を踏まえるならば、アンメットメディカルニーズを充足する自社製品のエビデンスを創出・発信するとともに医科学専門家と交流し、必要とする患者さんに自社製品をもれなく届けると述べることができるでしょう。

このようなMA活動を遂行するMSLには、まず高い専門性が求められます。その上で、営業活動とは一線を画す科学的中立性を保った上で、薬機法・情報提供に関する各種ガイドラインを遵守する高い倫理観も必要です5日本製薬工業協会、メディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)の目指すべき方向性、日本製薬工業協会ホームページ、2022年、https://www.jpma.or.jp/information/evaluation/results/allotment/gbkspa0000000sa4-att/MA_202207_msl.pdf、2024年4月10日。さらに、MA活動は医科学専門家だけでなく、社内の他部署との協調があってこそ成り立つため、円滑なコミュニケーションによって関係者を巻き込みながら活動を推進していく能力も重要になります。上述の通りMSLには幅広いスキルが求められるため、個人として、組織としての継続的な研鑽が重要となります。