メディカルプランの手法②-各フェーズで求められる活動

製品価値最大化に基づくエビデンス創出計画が重要である

特定されたアンメットメディカルニーズ(UMN)には、それぞれを解決するためのエビデンス創出計画が立案されます。メディカルプランには「いつ、何を、どこで、だれが」ということが細かく記載されます。計画立案に当たってはメディカルプランの目的である「製品価値の最大化」に基づいて優先順位がつけられる必要があります。製品ライフサイクルの各フェーズにおいて、必要なエビデンスが必要なタイミングに用意できることが重要です。

上市前におけるライフサイクルマネジメントを考慮した活動の例

ライフサイクル全体を考慮した計画を立案するためには、上市前の臨床開発期から準備を行うことが重要です。例えば2019年から導入された費用対効果評価制度1厚生労働省保険局医療課、令和4年度診療報酬改定の概要 費用対効果評価制度、厚生労働省ホームページ、2022年、https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000906933.pdf 、2024年2月24日では、制度の対象となった製品の薬価は評価の結果に応じて調整され、多くの場合引き下げられます。企業が当局に対して費用対効果の分析結果を提出するためには、対象となる製品を使用した患者さんのQOLや生産性損失のデータが必要とされます。限られた時間で説得力のある分析を行うためには、これらのデータは上市前の臨床試験の段階で取得するよう計画しておくことも望ましいです。

上市後におけるライフサイクルマネジメントを考慮した活動の例

上市後においても、ライフサイクルの各フェーズにおいて製品の価値最大化のために異なる活動が求められます。例えば、成長期では上市した製品の適応追加による市場拡大のためのエビデンス創出が主に求められるのに対し、安定成熟期では集積されたリアルワールドデータを用い、服薬アドヒアランス2服薬アドヒアランスとは、患者さんが治療方針に賛同し積極的に治療を受けることを指します。原則としてプロトコル通りに服薬している患者さんを対象とした臨床試験とは異なり、実臨床では患者さんの服薬アドヒアランスが十分でない可能性があります。を含めた実臨床における治療実績を訴求することが求められます。そして、衰退期では場合によりDDS(Drug delivery system)やIoT(Internet of Things)、センサーなどの服薬管理技術を付加することにより、服薬アドヒアランスを改善するとともに特許を延長する戦略がとられます。

メディカルプランは継続的な更新が必要である

これらの計画は、一度策定したら終わりではなく、変化する環境に合わせて随時更新していくことが重要です。プロダクトライフサイクルに合わせて当局や競合製品の情報収集を行い、柔軟に対応することが求められます。

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    厚生労働省保険局医療課、令和4年度診療報酬改定の概要 費用対効果評価制度、厚生労働省ホームページ、2022年、https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000906933.pdf 、2024年2月24日
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    服薬アドヒアランスとは、患者さんが治療方針に賛同し積極的に治療を受けることを指します。原則としてプロトコル通りに服薬している患者さんを対象とした臨床試験とは異なり、実臨床では患者さんの服薬アドヒアランスが十分でない可能性があります。