UMNの把握に必要な前提知識
製薬企業のメディカルアフェアーズ(MA)部門が担う業務の一つとして「アンメット・メディカル・ニーズ(UMN)の把握」があります。「疾患に関する知識」の項で解説した通り、UMNを把握するためには基本的な疾患・治療方法・薬剤に関する情報を収集し、理解する必要があります。
ここでは「治療方法」に関する情報の効率的な入手方法について解説します。
情報の種類と入手先
治療方法を理解するために必要な情報は主に病態・診断・治療選択肢・治療薬の4つです。
治療方法を理解するために、まずは病態および診断に至るまでのプロセスを理解しておくと、なぜその治療方法が選択されるのかまで理解を深めることができます。通常、疾患について把握をしたうえで(詳細は「疾患に関する知識」の項をご参照ください)、治療方法の情報収集を行うのが効率的です。
主に治療方法について、押さえるべきポイントと情報入手先を表1にまとめました。
情報の種類 | 押さえるべきポイント | 入手先 |
---|---|---|
治療フロー | 標準的な治療フローを確認し非薬物療法・薬物療法それぞれの推奨度や対象患者数の割合を大まかに把握する。薬物療法については、既存薬の位置付けやクリニカルクエスチョン(CQ)における評価および推奨度を確認する。 | ・診断・治療ガイドライン ・学会や製薬企業のウェブサイト ・製品添付文書、インタビューフォーム、適正使用ガイド、製品情報概要 ・最適使用推進ガイドライン ・論文 |
治療方法 | 標準治療の有無、数、患者割合、当該治療薬が治療アルゴリズム上、どこに位置付けられるか | ・診断・治療ガイドライン ・学会や製薬企業のウェブサイト ・論文 |
各治療方法の有効性・安全性 | 試験結果や診断・治療ガイドラインでの有効性と安全性に関する記載、CQにおける評価および推奨度から各薬剤の対象患者を推定 | ・診断・治療ガイドライン ・学会や製薬企業のウェブサイト ・製品添付文書、インタビュー・フォーム、適正使用ガイド、製品情報概要 ・論文 |
各治療薬の投与量・投与方法 | 薬剤別の投与方法だけでなく、安全性・有効性とのバランスを加味して評価 | ・製品添付文書、インタビューフォーム、適正使用ガイド、製品情報概要 ・最適使用推進ガイドライン ・論文 |
治療上の課題 | コスト、治療方法や治療可能施設の限定があるか | ・学会や製薬企業のウェブサイト ・適正使用ガイド ・最適使用推進ガイドライン |
新規治療方法 | 特徴(作用機序、適応症、有効性・安全性)および治療アルゴリズム上の位置付けの推定、開発状況および想定上市スケジュール | ・jRCT、臨床研究情報ポータルサイト、ClinicalTrials.gov ・論文 |
情報入手先の特徴と使い方
表1に挙げた通り、治療方法に関する情報の入手先は多くありますが、病態から治療方法まで網羅的な情報を入手できるのは診断・治療ガイドラインです。また、治療方法に関する情報を収集する際には、エビデンスの確立した情報だけではなく、症例報告など実臨床の情報も広く収集することで、より理解が深まります。
主な情報入手先の特徴と参照する際のポイントを下記にまとめます。