次世代医療基盤法とは

新薬や最先端医療など、次世代の医療の進歩につながる研究開発のために、「医療ビッグデータ」が注目されています。しかし、日本では、国民一人ひとりの医療情報について、画像や数値など検査結果の利活用が十分に進んでいません。また、患者の医療情報は医療機関ごとに保有されていて、情報を集約し利活用する仕組みがありませんでした。

そこで2018年5月、医療ビッグデータの土台となる患者一人ひとりの医療情報を個々の医療機関から集め、医療分野の研究開発のために利活用できるようにすることを目的とした法律「次世代医療基盤法(正式名称:医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律)」が施行されました。1政府広報オンライン、一人ひとりの医療情報が“明日の医療”につながります、2018年、https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201811/1.html (2024.3.1)

この法律では、国の認定を受けた「認定事業者」が医療機関から患者の医療情報を収集し、暗号化して保管。医療分野の研究開発の要望に応じて、必要な情報のみを研究機関や企業などに提供します。国民一人ひとりの医療情報が収集され活用されることで、病気の早期発見や新薬の開発などさまざまな成果につながり、将来より良い医療を受けられるようになることが期待されています。

次世代医療基盤法で何が変わるのか

世代医療基盤法によって、医療現場や研究現場にはどのような変化があるでしょうか。大きく3つのポイントあります。

1 オプトアウト手続きが可能に

患者が情報提供を望まない場合を除き、診察・検査・治療などの医療情報は認定事業者に提供されます(オプトアウト2患者が許諾の意思を示す行為を「オプトイン」と言い、許諾しない意思を示す行為を「オプトアウト」と言う。)。病院やクリニックなどの医療機関では、患者が最初に受診した時に、医師や看護師などから医療情報の提供について書面による通知が行われます。オプトアウト手続きの採用により、さらに大規模な情報収集が可能になると期待されています。3内閣府 健康・医療戦略推進事務局、「次世代医療基盤法」とは 「次世代医療基盤法の意義」、内閣府、2022 年、https://www8.cao.go.jp/iryou/gaiyou/pdf/seidonogaiyou.pdf (2024.3.1)

2 正確かつスピーディな情報処理

医療分野の研究開発や情報セキュリティに精通した「認定事業者」が医療情報の匿名加工を行うため、情報が安全に扱われるうえ、情報解析の速度が上がり、研究者は安心してデータを利用することができます。また、電子カルテやレセプト(診療報酬明細書)など種類の異なるデータも同一人物の情報として統合でき、利活用の幅が広がります。4内閣府 健康・医療戦略推進事務局、「次世代医療基盤法」とはhttps://www8.cao.go.jp/iryou/gaiyou/pdf/seidonogaiyou.pdf (2024.3.1)

3 施設ごとの倫理審査が不要に

認定事業者は、医療情報を匿名加工して研究者などに提供する前に、研究内容の倫理性や科学的妥当性などについて審査することが義務付けられています。そのため、企業や団体が、施設ごとの倫理審査委員会で審査する必要がなくなります。5内閣府、次世代医療基盤法 医療情報取扱事業者(医療機関、介護事業所、地方公共団体等)の方へ 制度の概要「次世代医療基盤法と研究倫理指針との関係」、内閣府、公開年不明、https://www8.cao.go.jp/iryou/institutions/pdf/gaiyo2.pdf (2024.3.1)