日本版HTAの課題
2019年に費用対効果制度が導入されてから一定の期間が経ち、2022年度までに30品目以上が対象となったこと、またその間にCOVID-19によるパンデミック、革新的な製品の上市などの環境変化があったことから、課題も明らかになってきています。そのため、2023年に中央社会保険医療協議会により制度見直しに関する検討が行われ、2024年にガイドラインが改訂されました1国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター(C2H)、中央社会保険医療協議会における費用対効果評価の分析ガイドライン2024年度版、2024年、https://c2h.niph.go.jp/tools/guideline/guideline_ja_2024.pdf、2024年10月7日。
制度見直しに関する検討2厚生労働省、令和6年度費用対効果評価制度の見直しについて、2024年、https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001193523.pdf、2024年10月7日では、比較対照技術の選定について「臨床的に幅広く用いられており」「評価対象技術によって代替されると想定される」ものの中から治療効果がより高いものを1つ選定するとされています。これは、単に安価なものを比較対照技術とするのではなく、診療ガイドライン等を考慮し臨床的に標準的な治療法として用いられているものを選択することを明確化したものです。
また、費用対効果分析は専門的な知見を必要とすることから、企業がリソース不足等を理由として分析不能を申し出ることができるとされました。この場合、申し出が正当であると認められれば企業が提供するデータを基に公的分析班が分析をおこなう、あるいは評価が中止されることになります。その場合、価格調整係数は最も小さい値となります。
HTAを含むHEOR領域は現在も盛んに研究が進められており、次世代医療基盤法など技術的、制度的な進歩により使用可能なデータも増えています。高齢化の進展により、医療費だけでなく介護費に大きな影響を与える製品も上市されることから、現状の課題を段階的に解決しながら、より良い制度としていくことが求められています。
- 1国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター(C2H)、中央社会保険医療協議会における費用対効果評価の分析ガイドライン2024年度版、2024年、https://c2h.niph.go.jp/tools/guideline/guideline_ja_2024.pdf、2024年10月7日
- 2厚生労働省、令和6年度費用対効果評価制度の見直しについて、2024年、https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001193523.pdf、2024年10月7日
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