メディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)は、社外の医科学専門家と双方向に高度な医科学的交流を行うことを主業務とする職種です。医薬情報担当者であるMRと比べMSLの歴史は浅く、ここ十数年で急速に拡大しています。2012年時点で1名以上のMSLを擁する製薬企業数は10社でしたが、2021年には41社に増加し、総数も1,114名と1,000名を超えました。MSLは外部の医療従事者とのインターフェースであり、アンメットメディカルニーズの把握および解決に寄与する存在として期待が高まっています。MR数が減少するなか、多くの製薬企業において今後もMSLの増員が予定されています1森次 幸男、柴 英幸、福井 元子、西馬 信一、メディカルアフェアーズ/メディカル・サイエンス・リエゾンの組織構造と医療貢献、医薬品情報学、2022、24、38-65。

しかし、MSLの歴史が浅い日本では、公共財団法人MR認定センターが提供するMR認定試験のような資格は存在しません。米国では、1967年にアップジョン社(現ファイザー株式会社)が最初にMSLを導入して以降、その地位が確立され2前田 英紀、日本におけるメディカルアフェアーズの歴史-過去、現在、将来-、医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス、2020、51、345-353、現在はアメリカ政府公認のNPO組織MSL Society(MSLS)がMSL Board Certification(MSL-BC®)による認定や教育を行っています。MSL-BC®は、学士以上の学位と通算1年以上のフルタイムのMSL経験が受験条件とされ、オンライン試験の合格をもってMSLの認定が得られます3Medical Science Liaison Society(MSLS)ホームページ、https://themsls.org/msl-board-certification、2024年10月18日。
一方の日本は、内資系製薬企業にはじめてメディカルアフェアーズ(MA)部門が導入されたのが2012年頃から、と米国に遅れをとっており、MSL-BC®のような公のMSL認定試験はありません。業界内でもMSLの基準統一は図れておらず、社内にMSL認定制度があるのは未だ全体の5割程度に留まっています4森次 幸男、柴 英幸、福井 元子、西馬 信一、メディカルアフェアーズ/メディカル・サイエンス・リエゾンの組織構造と医療貢献、医薬品情報学、2022、24、38-65。多くの製薬企業がMSL向けに独自にOJTや研修を行っているのが日本の実情といえます。一方、製薬企業以外の第三者機関がMSLの評価基準を独自に定める動きも進んでいます。代表的な制度を紹介します。
JAPhMed によるMSL認証制度
代表的な認証制度が、一般財団法人 日本製薬医学会(JAPhMed)が実施する、「MSL認定制度第三者認証事業(MSL制度認証事業)」です5一般財団法人 日本製薬医学会(JAPhMed)、MSL制度認証事業、一般財団法人 日本製薬医学会(JAPhMed)ホームページ、https://japhmed.jp/msl/msl.html、2024年10月18日。
この制度は、各製薬企業等がMSLを独自に認定する内部規定を、JAPhMedが審査し、認証する制度です。最初に認証を受けたのはアストラゼネカ株式会社でした。2024年現時点において認証取得企業数は5社と公表されています。アストラゼネカ株式会社のほか、武田薬品工業株式会社、中外製薬株式会社、レオ ファーマ株式会社、住友ファーマ株式会社(順不同)が認証を取得しています。
- 1森次 幸男、柴 英幸、福井 元子、西馬 信一、メディカルアフェアーズ/メディカル・サイエンス・リエゾンの組織構造と医療貢献、医薬品情報学、2022、24、38-65
- 2前田 英紀、日本におけるメディカルアフェアーズの歴史-過去、現在、将来-、医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス、2020、51、345-353
- 3Medical Science Liaison Society(MSLS)ホームページ、https://themsls.org/msl-board-certification、2024年10月18日
- 4森次 幸男、柴 英幸、福井 元子、西馬 信一、メディカルアフェアーズ/メディカル・サイエンス・リエゾンの組織構造と医療貢献、医薬品情報学、2022、24、38-65
- 5一般財団法人 日本製薬医学会(JAPhMed)、MSL制度認証事業、一般財団法人 日本製薬医学会(JAPhMed)ホームページ、https://japhmed.jp/msl/msl.html、2024年10月18日