その他の視点でのアンメット・メディカル・ニーズの手法
患者が報告する課題、アンメット・メディカル・ニーズ
UMNは本来、患者さんにおいて満たされていないニーズです。そのため、患者さんを対象とした調査を実施してUMNを把握する方法もあります。
例えば、日本のリウマチ性疾患患者さんにおけるUMNの実態について、システマティックレビューを実施した報告1Yamazaki S, Izawa K, Matsushita M, Moriichi A, Kishida D, Yoshifuji H, Yamaji K, Nishikomori R, Mori M, Miyamae T. Promoting awareness of terminology related to unmet medical needs in context of rheumatic diseases in Japan: a systematic review for evaluating unmet medical needs. Rheumatol Int. 2023;43(11):2021-2030.では、特定された研究のほとんど(25件中19件)が患者アンケート調査に基づいています。また、UMNに関連すると考えられる要素として、精神神経症状(うつ、疲労、痛み、恐怖、不安、睡眠障害)、治療へのアクセス、健康状態の指標、社会的サポート、日常生活活動、患者満足度、Quality of Life、ライフスタイル、健康への態度などが注目されていることが報告されています。
その他、アトピー性皮膚炎の患者さんを対象にしたアンケート調査2Kamei K, Hirose T, Yoshii N, Tanaka A. Burden of illness, medication adherence, and unmet medical needs in Japanese patients with atopic dermatitis: A retrospective analysis of a cross-sectional questionnaire survey. J Dermatol. 2021;48(10):1491-1498.では、治療におけるUMNとして、25項目の要素について重要と考えるかどうか、実際に満足しているかどうかを尋ね、結果を散布図で示しています。その結果、重要であるにもかかわらず不満足な要素として、治療費、通院の負担、疾患の予後についての説明、を挙げています。この研究では他にも、残余リスクとして患者さんの服薬アドヒアランスに注目し、ヘルスリテラシーや、医師・看護師・薬剤師とのコミュニケーションや受けた説明への満足度が重要であることを報告しています。
処方された薬を服用しない場合に発生する残薬も残余リスクの原因となり、UMNと関連します。患者アンケートに基づく研究では、糖尿病患者さんにおいて、「残薬あり」が33.1%であることを示し、残薬ありの方が有意に血糖コントロール不良であることを報告しました(図3)3寺内 康夫ほか、経口治療薬服薬中の2型糖尿病患者の残薬に関する調査―残薬有無に影響する要因分析―、薬理と治療、2017、45(11)、1763-1773。残薬に関連する要因として、服薬頻度高(1日2回以上)、性格が楽観志向、治療へのあきらめ志向を挙げ、残薬を回避する要因として、診療所での受診、性格が几帳面、症状を管理しようとする志向性などを挙げています。
新たなアンメット・メディカル・ニーズ指標
アンケート調査の結果と公開情報やリアルワールドデータを組み合わせた新たなUMN把握の方法も考えられます。図4は横軸に医薬品の市場規模、縦軸に医師へのアンケートに基づく各疾患の診療・診断の難易度をプロットし、医療費をチャートの大きさで表現したグラフになります(アンメット・ダイアグノーシス・ニーズ)。今後、予防領域の拡大や、医薬品開発の希少疾患領域への進展が進むと予想される中、より早期に診療・診断の精度を高め、潜在患者を顕在患者へ転換するには、どの疾患領域に注目するべきかの判断を支援する考え方といえます。例えば、市場規模が大きく診療・診断難易度が高い疾患として、脳梗塞、統合失調症、認知症、卵巣がん、が考えられます。
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