エビデンスの確実性(強さ)と推奨の強さ(推奨度)
Mindsによる診療ガイドラインの作成マニュアルにはGRADE(The Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)アプローチをはじめ、国際標準の診療ガイドライン作成方法が取り入れられています。SRによりまとめられたエビデンス総体の評価に関しては、推奨を考慮しない段階で行われるSRでは効果指標の確実性に対する確信という意味で「エビデンスの確実性(質)」、という表現を用いる 一方、推奨作成の段階では推奨を支持する強さに対する確信という意味で「エビデンスの確実性(強さ)」という表現を用います1Minds診療ガイドライン作成マニュアル編集委員会、Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver. 3.0、公益財団法人 日本医療機能評価機構ホームページ、2021年、https://minds.jcqhc.or.jp/docs/methods/cpg-development/minds-manual/pdf/all_manual_.pdf、2024年5月20日。
エビデンスの確実性(強さ)とは別に、診療ガイドライン作成グループによる合意により推奨度が決定されます。エビデンスの確実性(強さ)と介入に対する推奨の強さ(推奨度)の表記方法および考え方は表1、表2を参照ください。実際の診療ガイドライン上の推奨文にはCQに対し、これら2つの指標が併記されます。これらは互いに独立しており、たとえば2つのCQの答えにそれぞれ1Aと1Bと表記されていた場合、エビデンスの強さに差はあっても医学専門家の合意として推奨度(1)は同じであることを意味します。また推奨度の考え方には実施することを推奨するか、実施しないことを推奨するかの2つの方向性があることに注意しましょう。これらの表記はあくまで指標であるため、診療ガイドラインによっては異なる表記をしている場合がありますが、基本的な考え方は共通しています。
記号 | 効果の推定値が推奨を支持するものとして適切かに関する確信の程度 |
---|---|
A | 強く確信がある |
B | 中程度の確信がある |
C | 確信が限定的である |
D | ほとんど確信できない |
記号 | 推奨の強さ |
---|---|
1 | 強く推奨する |
2 | 弱く推奨する(提案する、条件付きで推奨する) |
海外の診療ガイドラインとの関わり
日本国内で作成される診療ガイドラインは、各国で発行されているガイドラインや治療指針を参考にしている場合が多くあります。例として米国のNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)が提供するがんに関するガイドライン、英国のNational Institute for Health and Care Excellence(NICE)が提供する費用対効果の観点からのガイドラインは、世界的に信頼性が高いエビデンスに基づいています。また、世界保健機構(WHO)が発行する疾患に関するガイドラインや米国食品医薬品局 (FDA)、欧州医薬品庁 (EMA)などの規制当局のほか、米国心臓学会(AHA)や米国臨床腫瘍学会(ASCO)、または欧州糖尿病学会(EASD)などの学会が提供するガイドラインは、国際的な医療従事者や製薬企業にとって信頼性の高い情報源とされています。
これらの海外ガイドラインは、多様な人種・地域の患者を対象にしたエビデンスを活用しており、日本のMA部門にとってもUMNの把握における貴重な資料となるとともに国内の診療ガイドラインと切り離せない内容であることを理解しておきましょう。
- 1Minds診療ガイドライン作成マニュアル編集委員会、Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver. 3.0、公益財団法人 日本医療機能評価機構ホームページ、2021年、https://minds.jcqhc.or.jp/docs/methods/cpg-development/minds-manual/pdf/all_manual_.pdf、2024年5月20日
- 2Minds診療ガイドライン作成マニュアル編集委員会、Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver. 3.0、公益財団法人 日本医療機能評価機構ホームページ、2021年、https://minds.jcqhc.or.jp/docs/methods/cpg-development/minds-manual/pdf/all_manual_.pdf、2024年5月20日
- 3Minds診療ガイドライン作成マニュアル編集委員会、Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver. 3.0、公益財団法人 日本医療機能評価機構ホームページ、2021年、https://minds.jcqhc.or.jp/docs/methods/cpg-development/minds-manual/pdf/all_manual_.pdf、2024年5月20日
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