個人情報保護法と次世代医療基盤法

個人情報保護法(正式名称:個人情報の保護に関する法律)は、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とした法律です。高度情報通信社会(デジタル社会)の進展に伴い、個人情報が大量に取り扱われるようになったことを受け、「個人情報取扱事業者」などを定義し、国や地方自治体、事業者が遵守すべき義務などが定められています。中でも医療分野は、他分野と比べて厳格な保護の対象とされています1政府広報オンライン、「個人情報保護法」をわかりやすく解説 個人情報の取扱いルールとは?、政府広報オンライン、2022年、https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201703/1.html (2024.3.1)

医療情報の利活用にあたっては、個人情報保護法が「ブレーキ」に例えられるのに対し、次世代医療基盤法(正式名称:医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律)は「アクセル」に例えられますが、個人情報保護法と次世代医療基盤法が両輪として機能することで、医療データの利活用が進むとされています。 

個人情報保護法と次世代医療基盤法のこれまで

2017年の個人情報保護法改正では、医療情報を医療機関外に持ち出すには、患者の本人同意(オプトイン)を得ることが必要になり、医療情報の利活用のハードルが高くなりました2内閣府 健康・医療戦略推進事務局、「次世代医療基盤法」とは 「次世代医療基盤法の意義」、内閣府、2022年、https://www8.cao.go.jp/iryou/gaiyou/pdf/seidonogaiyou.pdf (2024.3.1)

そこで、カルテや検査データなど、医療機関が持つ患者の医療情報を匿名加工し、医療分野の研究開発で活用できるようにするための法律「次世代医療基盤法」が施行されました。これにより、医療情報の保護と利活用という両輪が揃い、安心・安全に医療データを利用するための基礎ができあがりました。 

年表では「プライバシー権保護」と「医療情報の利活用」の両立を図るために行われてきた法整備の歩み3個人情報保護委員会 個人情報保護法の基本、個人情報保護委員会、2023年、https://www.ppc.go.jp/files/pdf/kihon_202309.pdf (2024.3.1)を振り返ります。

法改正による仮名加工医療情報の利活用で期待されること

2024年の次世代医療基盤法改正では、仮名加工医療情報の利活用のほか、レセプトの全国データベース(NDB)等との連結解析も可能になるなど、研究開発への有用性がさらに高まる見込みです。

こうした現状を受け、日本製薬工業協会では「健康・医療・介護分野の仮名化データ利活用で実現できることの一例」4日本製薬工業協会 医療等情報の二次利用に関するワーキンググループ、健康医療データの利活用について、厚生労働省、2023年、https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001166479.pdf (2024.3.1)として4項目を挙げています。