がんと臨床検査値-血液毒性の評価

はじめに:がん薬物療法と血液毒性

がん薬物療法では、治療効果と同時にさまざまな副作用が生じます。特に、白血球や血小板の減少といった血液毒性は、感染症や出血のリスクを高めるだけでなく、減量・休薬・延期などの判断にも大きな影響を与えます。そのため、血液毒性を正確に評価し、標準化することは、治療管理に欠かせません。

電子カルテ由来データベース(DB)で取得できる検査値を有害事象共通用語規準(CTCAE:Common Terminology Criteria for Adverse Events)に準拠してグレード化することで、実臨床下の血液毒性を標準化して把握できます。検査値×処方・投与実績×支持療法を連結し、減量・休薬・延期などの治療変更との関係を定量化でき、血液毒性を考慮した治療戦略に資する示唆を与えることができます。本稿では、血液毒性の臨床上の影響、判定基準(CTCAE)、電子カルテ由来DBでの捉え方、その限界と克服のための工夫、そして総括としてDB解析の意義を解説します。

血液毒性とは何か

がん薬物療法(細胞障害性抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬など)では、骨髄抑制を主体とする血液毒性(貧血、好中球減少/発熱性好中球減少症、血小板減少、白血球減少、リンパ球減少など)が高頻度に生じます。血液毒性は無症候性に経過することもありますが、感染症や出血、倦怠感の増悪を介して救急受診・入院の増加や用量減量・休薬などの治療変更につながり、結果として治療継続性やアウトカムに影響します。

臨床上の影響

治療強度・スケジュールへの影響

血液毒性に対しては、まず適切な対処をおこないます。好中球減少では顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF:Granulocyte Colony-Stimulating Factor )による予防投与や治療投与、血小板減少では輸血や出血リスク回避のための処置、貧血では赤血球輸血や鉄剤・エリスロポエチン製剤の検討が必要になります。それでもなお改善が見込めない場合、やむを得ず用量減量、休薬・延期、レジメン変更、中止などの治療変更に至ることがあります。これらの介入や治療変更は相対用量強度(Relative Dose Intensity)低下の一因となり、有効性に影響する可能性があります。したがって、血液毒性は単なる検査値異常ではなく、治療戦略全体に関わる重要な判断材料です。

アウトカムへの影響