研究デザインの選び方

この記事の概要

質の高いエビデンスを得るためには、介入研究・観察研究といった研究デザインの優劣を固定的に捉えるのではなく、リサーチクエスチョンに合致した最適な研究デザインを選択し、バイアスを適切にコントロールすることが重要です。

 臨床研究の種類

ヒトを対象とした臨床研究は、研究者による治療といった「介入」の有無によって、介入研究と観察研究に大別されます。

 観察研究の特徴

観察研究は、介入を伴わずに研究対象者のデータを観察する点が特徴です。時間の向きによって、主に以下の3つに分類されます。

  • 前向き研究:未来の結果を追う研究(コホート研究など)
  • 後ろ向き研究:過去の原因を探る研究(ケース・コントロール研究など)
  • 横断研究:一時点を調査する研究
 コホート研究とケース・コントロール研究の違い

それぞれ以下のような違いがあります。

  • コホート研究:特定の集団を未来に向かって追跡し、「要因」と「結果」の関連を調べる研究
  • ケース・コントロール研究:「結果」の有無で群を分け、過去の「要因」を比較して関連を探る研究
 適切な研究デザインの選び方

まずPECO(Patients, Exposure, Control, Outcome)などのフレームワークを用いて、具体的で実現可能なリサーチクエスチョンを作成することが不可欠です。その問いに最も的確に答えられる研究デザインを選択します。

 研究デザインとエビデンスの強さ

かつては介入研究(ランダム化比較試験など)を観察研究(コホート研究など)よりも上位とする階層(エビデンス・ピラミッド)が考えられていましたが、現在は修正されています。リサーチクエスチョンに合致し、バイアスが適切に制御されていれば、観察研究が介入研究を上回るエビデンスとなることもあります。

研究デザインの種類1疫学 ─医学的研究と実践のサイエンス─、Leon Gordis 著、木原 正博 他翻訳、メディカルサイエンスインターナショナル、2010年 2ロスマンの疫学 科学的思考への誘い 第2版、KennethJ. Rothman 著、矢野 栄二 他翻訳、篠原出版新社、2013年

ヒトを対象とした臨床研究は、対象者への介入をおこなうかによって大きく、介入研究(interventional study)と観察研究(observational study)に分類されます(表1)。

介入研究の種類ランダム割付比較対照研究の向き代表的な研究デザイン
介入研究前向きランダム化比較試験
介入研究×前向き非ランダム化比較試験
介入研究××前向き単群試験
×観察研究前向きコホート研究
×観察研究後ろ向きケース・コントロール研究
×観察研究一時点横断研究
×観察研究×記述的研究
表1. 臨床研究の分類

介入研究は、治療法の効果を調べるために、治療法を与えるかどうか、あるいはその程度を積極的に研究者が変更する研究で、より信頼性の高いデータを得ることを目的におこなわれますが、時間やコストがかかります。介入の有無による影響を公平に比較するためにランダム割付が検討されます。ランダム化によって、介入の有無以外の要因を各集団にバランスよく振り分けることができます。

観察研究は介入を伴わない研究で、研究対象者に関するデータを観察します。リアルワールドデータベースの活用の進展に伴い、観察研究も拡大しています。

観察研究の種類3疫学 ─医学的研究と実践のサイエンス─、Leon Gordis 著、木原 正博 他翻訳、メディカルサイエンスインターナショナル、2010年 4ロスマンの疫学 科学的思考への誘い 第2版、KennethJ. Rothman 著、矢野 栄二 他翻訳、篠原出版新社、2013年

観察研究は、比較対象を設けるか、また研究の向きによってさらに分類されます(表1)。研究開始時点で曝露情報(治療法など)を測定し、未来に向けてアウトカムを測定する研究を前向き研究(prospective study)、研究開始時点でアウトカムを測定し、曝露情報については過去のデータから測定する研究を後ろ向き研究(retrospective study)といいます。どちらも研究開始時点で測定する場合は横断研究(cross-sectional study)です。前向き研究の代表的な研究デザインとしてはコホート研究、後ろ向き研究の代表的な研究デザインとしてケース・コントロール研究(症例対照研究)があります(表2)。いずれも曝露とアウトカムの関係を確認するために用いられるデザインです。

コホート研究ケース・コントロール研究
At risk集団をすべて対象とする。抽出した集団を対象とする。
(アウトカムが観察された対象集団を特定し、次にAt risk集団から比較対照集団を抽出する)
リスク・リスク比の計算が可能。リスク・リスク比は比較対照集団の標本抽出割合に左右されるためオッズ比を用いる。
複数のアウトカムについて検討可能。複数の曝露因子について検討可能。
費用と時間がかかる。費用と時間がかからない。
前向きも後ろ向きもありえる。前向きも後ろ向きもありえる。
表2. コホート研究とケース・コントロール研究