Insightに関する考え方②

選好を明らかにする

対象疾患における製品開発が進むと各社から製品が上市され、患者さんや医療従事者は複数の候補から治療法を選択する必要が出てきます。そのような状況において、ある製品が別の製品の完全な上位互換であることは稀です。すなわち、主たる有効性において同等であっても副作用の種類や発現頻度、投与経路、投与回数、保管条件などの製品プロファイルに差があることがほとんどです。

このような場合、医療従事者はエビデンスや経験に基づき製品の使い分けの意向を持ちますが、必ずしもそれが患者さんの意向と一致するとは限りません。日本の医療に対する患者さんの満足度は総じて高いものの、医師や医療従事者とのコミュニケーションに課題があり、医療に自分の価値観が反映されていないと考える患者さんも少なくないことが報告されています1患者の望みを⽀える「患者主体の医療」実現のための研究会報告書、SustainaHealth -サステナヘルス-ホームページ、2021年、
https://sustainahealth.jp/wp/wp-content/uploads/2021/11/%E6%82%A3%E8%80%85%E4%B8%BB%E4%BD%93%E3%81%AE%E5%8C%BB%E7%99%82%E7%A0%94%E7%A9%B6%E4%BC%9A__%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8%E6%9C%80%E7%B5%82%E7%89%88-_20220120.pdf、2024年3月21日
。患者中心の医療を実現するためにも、患者さんの治療に対する価値観を明らかにすることは重要です。医療従事者と患者さんの間にギャップがあることを前提とし、患者さんが治療方針の決定に参画する共同意思決定(Shared Decision Making)が患者中心の医療の考え方から注目されています。より良い共同意思決定の実践が患者さんの治療満足度を向上させることも報告されており2Luo H, Liu G, Lu J, Xue D. Association of shared decision making with inpatient satisfaction: a cross-sectional study. BMC Med Inform Decis Mak. 2021;21(1):25.、前提となる医療従事者や患者さんの選好を明らかにすることの重要度は高まっています。