Insightに関する考え方① 

メディカルアフェアーズ(MA)の活動において、アンメット・メディカル・ニーズを特定することは重要です。そのために当該疾患領域における事実(ファクト)を収集するとともに、事実に対する解釈であるInsightを導出する必要があります。Insightには様々なものが想定しえますが、情報の収集対象としては、主にキーオピニオンリーダー(KOL)と呼ばれる医科学の専門家と患者さんが挙がります。 

事実を収集する 

KOLを対象とした活動においては、メディカルサイエンスリエゾン(MSL)が重要な役割を担います。MSLの業務の一つとして外部の医科学専門家であるKOLとの医学的なディスカッションやインタビューを通じて行う「事実の収集」があります。しかし、日々のKOLや医療従事者とのコミュニケーションやアドバイザリーボードで得た意見はあくまで「事実の収集」であり、この段階ではInsightではありません。 

一方、患者さんを対象としたアンケート調査を行うことでも事実を収集することができます。政府統計などの公開情報や、リアルワールドデータ(RWD)からも患者さんについての事実を収集することができます。同様に、これらの情報もまたこの段階ではInsightたりえません。 

事実からInsightを導出する 

事実からInsightを導出するためには、重要な見解や所見の背景にある理由など「なぜ」を考えます。MA部門内で情報共有と議論、分析を繰り返し、「なるほど」と思えるような考え方や行動にたどり着くと、それが「Insight」となります。このようにInsightはMSLが一人で発見、導出するようなものではなく、MAのチームでの議論、分析を繰り返すことで導出されるものになります1製薬医学入門-くすりの価値最大化をめざして-、内田一郎、芹生卓、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2022年。 

また、導出されたInsightはKOLや医療従事者も気づいていない潜在的な動機や関心であるアンメット・メディカル・ニーズを顕在化すること、説明することにも繋がります。明確に定義されたアンメット・メディカル・ニーズにより適切なメディカルプランの立案が可能になります。 

立案されたメディカルプランに従って、前向きな臨床研究や後ろ向きでのRWDなどを用いたエビデンスの創出を行い、エビデンスをもとにした医学・科学的な情報の発信、提供をしていきます。 

このようにMSLを中心に事実を収集し、チームでInsightを導出することはMA業務において重要な上流工程の業務と言えるでしょう。 

  • 1
    製薬医学入門-くすりの価値最大化をめざして-、内田一郎、芹生卓、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2022年