アンメット・メディカル・ニーズ把握の手法

アンメット・メディカル・ニーズの指標について

アンメット・メディカル・ニーズの可視化について

日本製薬工業協会のレポートで使用されている治療満足度・薬剤貢献度は、ヒューマンサイエンス振興財団が1994年度から2019年度までの間、ほぼ5年に一度、一般内科医を対象に実施した調査の結果に基づいています1公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団、国内基盤技術調査報告書「60 疾患に関する医療ニーズ調査(第 6 回)」【分析編】、2020年。疾患ごとに、治療満足度は「十分に満足」「ある程度満足」「不満足」「治療が行えているとはいえない」の4段階で得た回答のうち「十分に満足」あるいは「ある程度満足」と回答した医師の割合であり、薬剤貢献度は「十分に貢献」「ある程度貢献」「あまり貢献していない」「効く薬がない」の4段階で得た回答のうち「十分に貢献」あるいは「ある程度貢献」と回答した医師の割合になります(図1)。

図1. 2019 年の調査対象 60 疾患における治療満足度・薬剤貢献度(*1 の報告内容をも
とに株式会社ヘルスケアコンサルティングが作成)

2000年の調査結果からの推移をみると、治療満足度・薬剤貢献度ともに改善がみられています(2000年と2019年の両方で調査対象となった36疾患のうち、治療満足度・薬剤貢献度ともに50%未満の疾患数:2000年 22疾患、2019年 4疾患)。2000~2010年には多くのがんで分子標的薬などの新しい機序の医薬品が登場し、同時期に治療満足度・薬剤貢献度が大きく改善したことから、アンメット・メディカル・ニーズ(UMN)が改善していく実態をある程度捉えていると考えられています(図2)。そうした経緯から、UMNを協議する厚生労働省の委員会などの資料でも取り上げられています2厚生労働省、(再掲)薬価専門部会 (平成25年9月25日) 日薬連提出資料、厚生労働省ホームページ、2013年、https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000026258.pdf、2024年2月20日 3厚生労働省、中央社会保険医療協議会 薬価専門部会・費用対効果評価専門部会合同部会資料、「高額医薬品(認知症薬)に対する対応」に係る意見、厚生労働省ホームページ、2023年、https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001165060.pdf、2024年2月20日

図2. 2000~2010 年のがん関連疾患の治療満足度・薬剤貢献度の推移(*1 の報告内容を
もとに株式会社ヘルスケアコンサルティングが作成)

アンメット・メディカル・ニーズの指標の課題について

ただし、このUMN指標にはいくつか課題が考えられます。まず医師の主観的な印象に基づいており、また、専門領域の細分化が進む中で、各疾患の専門医でなく一般内科医に調査を行っています。これらの課題点を考慮したうえでの指標としてみていくことは、忘れてはいけない視点であるといえます。

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    公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団、国内基盤技術調査報告書「60 疾患に関する医療ニーズ調査(第 6 回)」【分析編】、2020年
  • 2
    厚生労働省、(再掲)薬価専門部会 (平成25年9月25日) 日薬連提出資料、厚生労働省ホームページ、2013年、https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000026258.pdf、2024年2月20日
  • 3
    厚生労働省、中央社会保険医療協議会 薬価専門部会・費用対効果評価専門部会合同部会資料、「高額医薬品(認知症薬)に対する対応」に係る意見、厚生労働省ホームページ、2023年、https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001165060.pdf、2024年2月20日