倫理審査の概要
日本国内で実施される人を対象とする生命科学・医学系研究においては原則として「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」1文部科学省、厚生労働省、経済産業省、人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針、厚生労働省ホームページ、2021年、https://www.mhlw.go.jp/content/001077424.pdf、2024年11月22日に基づいて実施することが求められます。同指針は、研究対象者の生命、健康及び人権を尊重して研究を実施するため、研究計画の作成から同意取得、データ管理、結果の公表まで研究全体を網羅した倫理的指針であり、その中で倫理審査委員会(Research Ethics Committee)の審査を受けた研究計画書に従って適正に研究を実施しなければならないことが定められています。
その中でも、まだ承認されていない薬剤・医療機器を用いておこなわれる国の承認を得るための治験では「薬機法」2「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の略称という薬や医療機器全般に関する法律と、これに基づいて国が定めた「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」という規則に基づき治験審査委員会(Institutional Review Board)の審査を受けなければならないことが定められています。

これらの委員会は、医学系研究における倫理的な適切性を確保するための重要なプロセスを担っており、研究の質と安全性を保つために非常に重要です。審査委員会は、研究が実施される前に研究計画を審査し、患者や参加者の生命、健康及び人権が守られることを確認する役割を果たします。
上述の通り人を対象とする生命科学・医学系研究においては倫理審査委員会の審査を受けることが求められていますが、匿名加工情報のみを用いる場合など、倫理審査を必ずしも必要としないケースもあります。しかし、学術雑誌によっては、学術論文の採択の条件として倫理審査を経て実施された研究であることを求めていることがあるため、匿名加工情報を用いたデータベース研究においても倫理審査委員会の審査を受けるケースもあります。また、倫理審査を通じて、研究の信頼性と社会的受容性が高まり、研究結果が広く受け入れられる可能性が高くなります。
- 1文部科学省、厚生労働省、経済産業省、人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針、厚生労働省ホームページ、2021年、https://www.mhlw.go.jp/content/001077424.pdf、2024年11月22日
- 2「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の略称
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