シグナル検出の意義と課題に対するガイドライン
実際に添付文書の改訂においても、シグナル検出の結果が根拠の1つとして示されることがあります。例えばSGLT2阻害剤における壊死性筋膜炎1独立行政法人 医薬品医療機器総合機構、ナトリウム・グルコース共輸送体 2(SGLT2)阻害剤含有製剤の「使用上の注意」の改訂について、医薬品医療機器総合機構ホームページ、2019年、https://www.pmda.go.jp/files/000229296.pdf、2026年2月15日や抗PD-1抗体医薬品における結核の副作用追加2独立行政法人 医薬品医療機器総合機構、抗PD-1抗体医薬品の「使用上の注意」の改訂について、 医薬品医療機器総合機構ホームページ、2019年、https://www.pmda.go.jp/files/000229827.pdf、2026年2月15日などの添付文書改訂がされています。さらに医薬品の副作用報告が電子化されたデータベースとして、米国ではFDA Adverse Event Reporting System (FAERS)、日本では医薬品副作用データベース(JADER: Japanese Adverse Drug Event Report database)として無料でダウンロードして利用できることから、これらのデータベースを用いたシグナル検出が普及して、論文や学会発表が増えてきました。
しかしシグナル値をリスクの定量化であるかの如く論述しているなど不適切な研究もみられたことから、医薬品情報学会ではJADERを用いた研究におけるチェックリスト3酒井 隆全ほか、日本の有害事象自発報告データベース(JADER)を用いた研究におけるチェックリストの作成と実態調査、医薬品情報学、2020; 22(1): 7-16.を2020年に発表しています。さらに2024年には国際誌であるDrug Safetyでも「シグナル検出を報告するためのガイドライン」である「The REporting of A Disproportionality analysis for drUug Safety signal detection using individual case safety reports in PharmacoVigilance (READUS‑PV)」4Fusaroli M. et al. The Reporting of a Disproportionality Analysis for Drug Safety Signal Detection Using Individual Case Safety Reports in PharmacoVigilance (READUS-PV): Development and Statement. Drug Saf. 2024; 47(6):575-599.が発表されています。これも32項目のチェックリストとなっており、例えばどのようなデータを使用したか、どのような資金源で実施した研究であるかなど透明性や完全性、そして正確性を向上させることを意図しています。
このガイドラインは他の国際誌でも重視しており、例えば国際薬剤疫学会の国際誌であるPharmacoepidemiology & Drug Safety (PDS)のAuthor Guidelines5Pharmacoepidemiology and Drug Safety (PDS)、Author Guidelines、The International Society for Pharmacoepidemiology (ISPE)、2025年、https://onlinelibrary.wiley.com/page/journal/10991557/homepage/forauthors.html、2026年2月15日でも「we would recommend authors follow the READUS-PV reporting guidelines」とあり、このガイドラインに従うことを勧めています。
加えて「PDS will not consider papers based only on disproportionality analysis of spontaneous reporting data.」とも書かれており、単に自発報告のシグナル検出だけでは論文としてみなされない、すなわちそれは日常の医薬品安全性監視業務と考えられていると思われる点も今後研究を行う上で注意が必要です。

東京大学大学院医学系研究科 特任教授
小出 大介
こいで だいすけ
- 1独立行政法人 医薬品医療機器総合機構、ナトリウム・グルコース共輸送体 2(SGLT2)阻害剤含有製剤の「使用上の注意」の改訂について、医薬品医療機器総合機構ホームページ、2019年、https://www.pmda.go.jp/files/000229296.pdf、2026年2月15日
- 2独立行政法人 医薬品医療機器総合機構、抗PD-1抗体医薬品の「使用上の注意」の改訂について、 医薬品医療機器総合機構ホームページ、2019年、https://www.pmda.go.jp/files/000229827.pdf、2026年2月15日
- 3酒井 隆全ほか、日本の有害事象自発報告データベース(JADER)を用いた研究におけるチェックリストの作成と実態調査、医薬品情報学、2020; 22(1): 7-16.
- 4Fusaroli M. et al. The Reporting of a Disproportionality Analysis for Drug Safety Signal Detection Using Individual Case Safety Reports in PharmacoVigilance (READUS-PV): Development and Statement. Drug Saf. 2024; 47(6):575-599.
- 5Pharmacoepidemiology and Drug Safety (PDS)、Author Guidelines、The International Society for Pharmacoepidemiology (ISPE)、2025年、https://onlinelibrary.wiley.com/page/journal/10991557/homepage/forauthors.html、2026年2月15日
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