1.層別解析
表2は、喫煙と心筋梗塞の例について年齢別に発生率を比較した結果です。層別した各層内では対象者の年齢は限定されていますので、年齢と喫煙の関連を抑えることができます。したがって、このような層別解析により、年齢による交絡を制御した検討が可能になります。
| 喫煙群 | 非喫煙群 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 年齢(歳) | 発生数 | 人年 | 率※ | 発生数 | 人年 | 率※ | 率比 |
| 30 – 39 | 12 | 14,502 | 8.3 | 27 | 54,683 | 4.9 | 1.68 |
| 40 – 49 | 36 | 17,438 | 20.6 | 40 | 34,049 | 11.7 | 1.76 |
| 50 – 59 | 63 | 20,988 | 30.0 | 36 | 26,018 | 13.8 | 2.17 |
| 60 – 69 | 98 | 16,006 | 61.2 | 54 | 18,475 | 29.2 | 2.09 |
表2. 喫煙と心筋梗塞の関連(仮想例・年齢で層別)
この例では、いずれの年齢層における発生率比も表1の粗解析で推定された発生率比2.57よりも小さくなっています。この違いは、喫煙群に心筋梗塞発症リスクの高い高齢者が多く含まれていた結果であり、粗解析では発生率比を過大評価する方向のバイアスが生じていたことが分かります。
表2のように、交絡を制御した調整発生率比が層を通じて大きく変化しない場合には、層ごとの発生率比の重みつき平均により層間の情報を統合することが行われます。その方法の1つが、マンテル・ヘンツェル(Mantel-Haenszel)法です1Mantel N, Haenszel W. Statistical aspects of the analysis of data from retrospective studies of disease. JNCI 1959; 22: 719–48., 2Greenland S, Robins JM. Estimation of common effect parameter from sparse follow-up data. Biometrics 1985; 41: 55–68.。この例では、マンテル・ヘンツェル法による発生率比は2.00、95%信頼区間は1.62–2.47と算出されました。
しかしながら、層別解析には明確な限界があります。年齢以外にも、性別、体格指標(BMI)、血圧値、コレステロール値、アルコール摂取状況、運動習慣等多くの因子を考慮したい場合、それらの値の組み合わせで層別すると、層の数が急増し、各層に含まれる対象者数が少なくなります。極端な場合では、曝露群または非曝露群が存在しない層が生じ、効果指標が算出できなくなることがあります。
これらの層では発生率比が計算できないことから、多変数による層別により多くの情報が失われる結果となります。一方、層の数を減らすために、例えば年齢を50歳以上・未満の2カテゴリーのみで層別してしまうと、今度は各層内で年齢分布の違いが群間で生じ得ます。このような層内での交絡は残差交絡と呼ばれ、層別解析でもバイアスが除ききれない原因となります。
2.回帰モデル
多くの交絡因子を同時に調整するための方法として頻用されているのが、回帰モデルです。交絡調整のための回帰モデルでは、アウトカムを目的変数とし、曝露変数および交絡因子を説明変数として用います。線形回帰モデルやロジスティック回帰モデルはそれぞれ連続、2値のアウトカムの解析に適していますが、今回の喫煙と心筋梗塞の例のように発生率比を指標とした解析では、ポアソン回帰モデルが適しています。
人年法などによる発生率、すなわち疾患発生数(の期待値)を対象者の総追跡期間で除したものをλ、対象者に測定される曝露変数および交絡因子の組をxで表しましょう。発生率λは0から無限大の値をとり得るので、推定結果がマイナスの値をとらないよう対数変換したものをxの線形関数として以下の(1)式のように表現します。
log(λ) = β0 + β1x1 +β2x2 +・・・+βpxp (1)
ここでβはデータから推定される未知パラメータです。推定方法の詳細は省略しますが、疾患の発生についてポアソン分布を仮定し、最尤法と呼ばれる方法によりβが推定されるため、モデル(1)はポアソン回帰モデルと呼ばれています3Agresti AA. Categorical Data Analysis, 2nd ed. New York: Wiley, 2002.。
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