メディカルプランの目的②-製品の価値最大化とは

ライフサイクルマネジメントが製品の価値最大化において重要である

メディカルプランの目的である製品の価値最大化を理解するためには、ライフサイクルマネジメントという考え方が重要です(図)。一般に医薬品は上市後、医療従事者への浸透とともに売上が上昇する成長期、一定のシェアを獲得した安定成熟期を経て特許切れを迎え、長期収載品としてジェネリック製品との競争を余儀なくされる衰退期へと至ります。

図 製品の価値最大化におけるエビデンス創出の概要(株式会社ヘルスケアコンサルティング作成)

製品価値最大化とは、狭義には中長期的な適正使用の普及である

企業にとって、製品の価値最大化は狭義には適正使用の普及と定義することができますが、適正使用の普及は、①高いピーク売上を達成すること、②上市後に可能な限り安定成熟期・衰退期を延長させること、によって実現されます。即ち、短期的な売上獲得ではなく中長期的な適正使用の普及を主たる目的の一つとしてメディカルプランは作成されます。そのためには上市前からの中長期的な視点でのプランニングが重要となってきます。

メディカルプランでは他部門との連携が重要である

ライフサイクルマネジメントにおいては、上市後の各フェーズにおいて適切な活動をする(具体的な活動の例については、メディカルプランの手法の項をご参照ください)のみならず、上市前の臨床開発期から製品のライフサイクル全体を考慮した計画を立てることが必要です。また、創出したエビデンスは医療従事者とのコミュニケーションのみならず、費用対効果評価制度1厚生労働省保険局医療課、令和4年度診療報酬改定の概要 費用対効果評価制度、厚生労働省ホームページ、2022年、https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000906933.pdf、2024年2月24日への対応にも用いられます。このように、製品の価値最大化に必要なエビデンスはMA部門単独で完結するものではないため、他部門との連携が重要となります。連携をスムーズに行うためにも、製品の価値最大化という明確な目標に基づくメディカルプランが必要となります。他方で「製薬協コード・オブ・プラクティス」2日本製薬工業協会、製薬協コード・オブ・プラクティス、日本製薬工業協会ホームページ、2019年、https://www.jpma.or.jp/basis/code/lofurc0000001dqt-att/code2.pdf、2024年2月27日を遵守し、セールス部門とMA部門の分離には細心の注意を払うことが重要であり、セールスやマーケティングに傾注せずに科学的に中立な立場でなくてはいけません。

メディカルプランでは外部のステークホルダーマネジメントも担う

メディカルプランに従ったエビデンスデータの創出については社内部門の連携以上に、外部のステークホルダーのマネジメントで重要な役割を担います。「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」3日本製薬工業協会、企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドラインについて(解説)、日本製薬工業協会ホームページ、2022年、https://www.jpma.or.jp/basis/tomeisei/aboutguide/lofurc0000001g37-att/220120.pdf、2024年2月27日、「企業活動と患者団体の関係の透明性ガイドライン」4日本製薬工業協会、企業活動と患者団体の関係の透明性ガイドライン、日本製薬工業協会ホームページ、2022年、https://www.jpma.or.jp/basis/patient_tomeisei/aboutguide/tomeiseigl.html、2024年2月27日を遵守し、携わった臨床研究では医療機関、医療従事者や患者団体、患者さんに対しての関係の透明性を確保することにより、製薬企業が医学・薬学をはじめとするライフサイエンスの発展に寄与していること、および企業活動は高い倫理性を担保した上で行われていることについて広く社会の理解を得ることの役割も担っているといえます。