エビデンス創出のためのギャップ分析

ギャップ分析とは

製品が適応を持つ疾患におけるアンメット・メディカル・ニーズ(UMN)を、収集したInsightから特定できた後は、エビデンス創出計画に進む前にギャップ分析を行うことが一般的です。エビデンス創出のためのギャップ分析では大きく分けて①エビデンスが存在するか、②データが存在するかの2つを確認する必要があります。

エビデンスギャップ

目的を達成できるエビデンスが存在する場合、新規にエビデンスを創出する必要はありません。したがって、達成したい目的に基づき、UMNの存在や、製品がUMNを充足し得ることを説明するエビデンスの有無を確認する必要があります。この時、エビデンスギャップがある、とは目的のエビデンスがない状態を指します。

エビデンスの有無を確認する際、既に公表された文献の調査を行うだけでなく、臨床研究レジストリ1「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」により介入研究の場合、研究の概要を研究の実施に先立って登録し、公開することが義務付けられています。(UMIN-CTR2大学病院医療情報ネットワーク協議会、UMIN臨床試験登録システム(UMIN-CTR)、https://www.umin.ac.jp/ctr/index-j.htm、2024年4月19日など)を検索して現在実施中の臨床研究についても調査します。現時点ではエビデンスが存在しなくても、必要なタイミングまでに臨床研究の結果が公表される可能性が高いのであれば、同様の臨床研究を新たに実施する必要はないからです。そのため、いつまでにどのようなエビデンスが必要なのかを明確にしておくことが重要です。

データギャップ

求めるエビデンスが存在しない場合、エビデンスの創出を検討することになりますが、エビデンスの創出方法を検討するためには必要なデータが既に存在しているか、あるいは新規に取得する必要があるかを把握しておくことが重要です。データギャップがあるとは、必要なデータがない状態を指します。

例えば、ある疾患の患者さんに対する処方の実態を明らかにしたい場合、疾患名および処方はレセプトに記載されている情報ですから、レセプトデータベースを分析することで求める結果を得ることができると予想できます。一方で、患者さんの重症度別のQOLを明らかにしたい場合、既存のデータベースにそのようなデータはないと予想されるため患者さんに対してQOL調査票を用いてアンケート調査をする必要があります。但し、アンケート調査では、重症度は患者さんの自己申告で収集することになるという制約があります。

これまで、レセプトデータベースや電子カルテデータベースなど多数のデータベースが独立して存在していましたが、次世代医療基盤法3内閣府 健康・医療戦略推進事務局、改正次世代医療基盤法について、厚生労働省ホームページ、2023年、https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001166476.pdf、2024年4月19日によりデータベースを連結して分析することが可能になりました。データギャップが解消されることによりエビデンス創出においてデータベース分析の重要性が増していくことが予想されます。

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    「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」により介入研究の場合、研究の概要を研究の実施に先立って登録し、公開することが義務付けられています。
  • 2
    大学病院医療情報ネットワーク協議会、UMIN臨床試験登録システム(UMIN-CTR)、https://www.umin.ac.jp/ctr/index-j.htm、2024年4月19日
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    内閣府 健康・医療戦略推進事務局、改正次世代医療基盤法について、厚生労働省ホームページ、2023年、https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001166476.pdf、2024年4月19日