疾患に関する知識

UMNの把握に必要な前提知識

製薬企業のメディカルアフェアーズ(MA)部門が担う業務の一つとして「アンメット・メディカル・ニーズ(UMN)の把握」があります。現在の診療状況とUMNを把握することで、潜在的なリスクや市場規模が明らかになり、医薬品の開発余地に注目することが可能になります(詳細は「UMM把握の目的」の項をご参照ください)。

UMNを把握するための手法はさまざまですが(詳細は「UMM把握の手法」の項をご参照ください)、まずは基本的な疾患・治療方法・薬剤に関する情報を収集し、前提知識として理解する必要があります。

ここでは「疾患」に関する情報の効率的な入手方法について解説します。

情報の種類と入手先

疾患を理解するために必要な情報は主に5つに分類されます。それぞれ、押さえるべきポイントと情報入手先を表1にまとめました。

情報の種類押さえるべきポイント入手先
疫学・国内外の患者数、有病率、罹患率、死亡率
・治療患者 と 潜在患者 (未受診) の数、割合
・患者背景(男女比、年齢 など)
・診断・治療ガイドライン
・市場分析データ
・学会や製薬企業のウェブサイト
・論文
病態・定義
・病態生理、症状
・リスク因子
・合併症
・診断・治療ガイドライン
・学会や製薬企業のウェブサイト
・論文
・医療従事者、患者会、患者が作成するウェブサイト・ブログ
診断・診断フロー、診断方法・基準
・疾患の分類(病型、病期、重症度 など)
・検査・診断上の課題(簡便か、非専門医でも
診断可能か、検査可能施設の限定があるか など)
・診断・治療ガイドライン
・学会や製薬企業のウェブサイト
・論文
治療・治療フロー
・治療方法(標準治療の有無、数 など)
・各治療法の有効性、安全性
・治療上の課題(コスト、治療方法や治療可能施設の限定があるか など)
・診断・治療ガイドライン
・市場分析データ
・学会や製薬企業のウェブサイト
・製品添付文書、インタビューフォーム、適正使用ガイド、製品情報概要
・最適使用推進ガイドライン
・論文
・医療従事者、患者会、患者が作成するウェブサイト・ブログ
表1. 疾患理解に必要な情報

情報入手先の特徴と使い方

表1にさまざまな情報入手先を挙げましたが、情報量や内容の専門性には違いがあります。通常、情報収集を効率的に行うには、一般的で簡潔な情報から専門的で詳細な情報へと確認を進めますが、自身の現在の知識量と情報収集の目的に合わせて入手先を使い分けます。また、UMN把握につなげるためには、エビデンスの確立した情報だけではなく、実臨床の情報も広く収集して、疾患を包括的に理解することが求められます。