治療方法に関する知識②

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治療法の情報を効率的に入手し、治療に関するアンメット・メディカル・ニーズ(UMN)を理解する

情報の入手先は数多くあるため、必要な情報をどこで入手できるのか把握し、効率的に確認して疾患の基礎情報をキャッチアップすることが重要です。治療方法についてはまずは診断・治療ガイドラインなどのエビデンスが確立された情報がまとまっているもので全体像を把握し、論文などで実臨床の情報まで網羅的に情報を収集すると効率がよいでしょう。
具体的な新規治療方法の理解は、患者や社会における課題を明らかにする手段ともなります。以下にいくつかの例を示します。

  1. がん治療

がん治療においては免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が新たな治療選択肢を提供しています。一方で国内では点滴静注投与に限られており、「侵襲性が高い」、「拘束時間が長い」といったUMNが存在します。そのため現在、患者の負担や拘束時間を減らし、がん治療における患者のQOLを改善する新たな剤型としてアテゾリズマブの皮下注製剤が英国で承認されるなど、各ICIの皮下注製剤の開発が進んでいます。製薬企業にとっては特許切れに関連した収益維持の側面はあるものの、点滴静注投与では30~60分であった投与時間が、皮下注投与の場合は5分程度に短縮されると考えられています。

  1. 糖尿病治療

糖尿病治療においては、血糖コントロールに加え、患者の体重管理や心血管リスクの軽減も重要です。SU剤やチアゾリジン薬、インスリンなど一部の糖尿病治療薬は血糖を下げる一方で体重増加を引き起こすため、血糖コントロールと体重管理のバランスを取ることが難しい側面があります。また、肥満はインスリン抵抗性を増大させ血糖コントロールをより困難にするだけでなく、心血管疾患のリスク因子にもなり、糖尿病患者の長期的な健康アウトカムに影響を及ぼすことが懸念されます。

SGLT2阻害薬は糖尿病患者が有する心血管イベントリスクを有意に低下させることが示されており、GLP-1受容体作動薬は、血糖降下作用だけでなく体重減少効果を持つことから、従来の治療薬で満たせなかったUMN、糖尿病治療において体重増加を抑えながら血糖を適切に管理するという課題を解消することが期待されています。