UMNの把握に必要な前提知識
製薬企業のメディカルアフェアーズ(MA)部門が担う業務の一つとして「アンメット・メディカル・ニーズ(UMN)の把握」があります。「疾患に関する知識」の項で解説した通り、UMNを把握するためには基本的な疾患・治療方法・薬剤に関する情報を収集し、理解する必要があります。ここでは、薬剤情報がUMN把握にどのように活用できるかを踏まえ、その具体的な情報収集先や要点を解説します。

薬剤情報収集の重要性
薬剤に関する情報を効率的に入手することは、当該医薬品の強み・弱みのみならず、医薬品間の比較や市場における位置づけを把握する手がかりとなります。また、投与に伴う患者の負担(副作用、費用、投与頻度など)を理解することで、患者が直面するUMNを特定することが可能です。これにより、SWOT分析や最適なメディカルプラン策定が可能となり、UMNに基づいた新たな治療価値の提案やエビデンス創出を含むMA活動に繋がります。
情報の種類と入手先
薬剤の理解に必要な情報を「適応症・作用機序」~「他剤との比較」まで7項目に分類し、それぞれ押さえるべきポイントと情報入手先をまとめています(表1)。このような情報を把握し、該当薬剤の理解を体系的に深めます。
情報の種類 | 押さえるべきポイント | 入手先 |
---|---|---|
適応症・作用機序 | ・単一の適応症か、複数の適応症があるか ・新規作用機序か、類似薬はあるか | ・製品添付文書、インタビューフォーム、適正使用ガイド、製品情報概要 ・最適使用推進ガイドライン ・論文 |
用法用量・剤型 | ・どのように投与するのか (剤型、投与回数、投与方法) ・併用薬の有無 ・使用上の注意はあるか | |
使用条件 | ・施設要件や専門医資格の制限があるか ・使用前・後に必要な検査があるか | |
有効性・安全性 | ・承認時試験を含む臨床試験のデザインや結果 ・診断・治療ガイドラインでの有効性と安全性に関する記載、クリニカルクエスチョン(CQ)における評価および推奨度 ・警告・禁忌はあるか | ・診断・治療ガイドライン ・学会や製薬企業のウェブサイト ・製品添付文書、インタビューフォーム、適正使用ガイド、製品情報概要 ・最適使用推進ガイドライン ・論文 |
治療上の位置づけ | ・標準治療の有無 ・診断・治療ガイドラインにおける治療アルゴリズム上、当該治療薬がどこに位置づけられているか | |
薬価・患者負担額 | ・薬剤1ヵ月あたりの患者負担額 ・難病医療費助成制度の対象か | ・薬価基準収載品目リスト ・難病情報センターのウェブサイト |
他剤との比較 | ・同種同効薬があるか ・診断・治療ガイドラインにおける治療アルゴリズムの位置づけ ・適応、有効性・安全性、用法用量、費用負担の違い ・後発品はあるか ・新規薬剤の開発状況および想定上市スケジュール | ・jRCT、臨床研究情報ポータルサイト、ClinicalTrials.gov ・論文 ・医療従事者、患者会、患者が作成するウェブサイト・ブログ |
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