メディカルアフェアーズ部門が立案するメディカルエデュケーション
メディカルアフェアーズ(MA)部門によるメディカルエデュケーション(ME)は、医療従事者に最新かつ適切な医学・科学的情報を提供し、医療従事者の専門的能力の向上を介して、医療の発展に貢献すること1一般財団法人 日本製薬医学会、Medical Education に関する提言、一般財団法人 日本製薬医学会ホームページ、2023年、https://japhmed.jp/files/proposal20231115.pdf、2024年5月14日を目的として実施されます。医療従事者との科学的情報交流やアンケート調査などを介してアンメット・メディカル・ニーズ(UMN)を把握する機会が多くあるMA部門は、MEを企画立案する上で大きな強みを持つといえます。
MEを立案する上で満たすべき内容
日本製薬医学会は、MA部門が主管として企画するMEの内容として、以下の5つの事項を提言しています2一般財団法人 日本製薬医学会、Medical Education に関する提言、一般財団法人 日本製薬医学会ホームページ、2023年、https://japhmed.jp/files/proposal20231115.pdf、2024年5月14日。
- 最新かつ適切に評価された情報で構成されていること
- 医療従事者の教育ニーズに基づいて立案されていること
- 適切な受講対象者が設定されていること
- 医学的に公平かつバランスが取れた内容であり、自社医薬品などへの処方誘引がないこと
- 各種の関連法規やコード・オブ・プラクティス、公正競争規約など、定められているルールに沿った内容であること
MA部門は、これらのことに留意してMEを企画する必要があります。
MEの立案フロー
MEは受講対象である医療従事者の教育ニーズに沿った内容である必要があります。MEの企画立案は以下のフローで検討します3村田 洋子ほか、ポジションペーパー:製薬企業のメディカルアフェアーズ部門が実施するメディカルエデュケーションの意義と実践、PMDRS、2021、52(8)、649-656。
- スコープ設定
どの疾患領域、どの職種、どの診療科に向けてMEを開催するのか、自社の医薬品に関連する領域を中心に検討します。 - 教育ニーズの調査
(1)で設定したスコープに基づき、市場調査を実施して教育ニーズがどこにあるのか調査を行います。市場調査は、医療従事者を対象に第三者機関を通したインタビューやアンケートで教育ニーズを聴取する、といった方法が考えられます。また、学会などのイベントに参加して、医療従事者の関心の高いトピックを継続的に把握することも、教育ニーズの調査において重要です。 - 教育目的と適切な受講対象者の設定
(2)の教育ニーズを満たし、医療従事者の知識・能力の向上に寄与するために、MEを介して何を達成したいのか、具体的な教育目的を設定します。また、その教育目的の達成のため、適切な受講対象者のレベルを検討することも必要です。受講対象者を経験やスキルレベル(例えば、指導医、専門医など)で区分し、それに応じたMEプログラムを準備することが求められます。 - コンテンツ構成の決定とプログラムの実行
上で述べた日本製薬医学会の提言に留意してコンテンツの構成を決定します。MEプログラムは様々な媒体の中から、適切な展開方法を選択することで教育目的に沿った教育効果を得やすくなります。コンテンツ構成の決定については「MAによるメディカルマテリアルの制作」「MA部門による情報提供の質の担保」、MEプログラムの展開方法については「Medical Educationを成功に導くチャネル選択」のそれぞれの項で関連情報をご確認ください。 - 教育効果の検証とフィードバック
教育効果の検証方法は、理想的なMEを実現するための重要な要素といえます(詳細は「Medical Educationを成功に導くチャネル選択」の項をご確認ください)。MEは、教育効果の検証によるフィードバックを受けて継続的に実施していくことが重要です。教育効果の検証方法には、MEの実施前後のテストで知識やスキルの変化を評価する方法、ME実施後のフォローアップで効果を確認する方法4村田 洋子ほか、ポジションペーパー:製薬企業のメディカルアフェアーズ部門が実施するメディカルエデュケーションの意義と実践、PMDRS、2021、52(8)、649-656のほか、トラッキングによる継続的な医師の動向調査で効果を確認する方法が考えられます。
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