MAの組織目的を達成するためのMSLの評価KPIとは
ここまで、組織としてのMAの目的を達成するためのKPIについて述べてきましたが、MAに所属するメディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)個人はどのようなKPIで評価されるべきでしょうか。MSLの評価指標についても、活動量を評価するKPIが多く設定されているようですが、組織のKPI同様、目的に繋がる指標で評価されることが望ましいです。
日本製薬工業協会の「MSLの目指すべき方向性」1日本製薬工業協会 医薬品評価委員会MA部会、メディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)の目指すべき方向性、日本製薬工業協会ホームページ、2022年、https://www.jpma.or.jp/information/evaluation/results/allotment/gbkspa0000000sa4-att/MA_202207_msl.pdf、2024年4月10日ではMSLの業績評価指標の例として①UMN、Insight、もしくはそれらに繋がる情報の収集など、②メディカルプラン策定への貢献度、③メディカルプラン遂行への貢献度、④社外医科学専門家による評価、⑤社内関連部門からの評価、⑥コンプライアンスの遵守状況の6つが挙げられています。この中でも①②③はUMNの特定、Insightの収集、メディカルプランに基づくエビデンス創出・発信といった活動量を評価するKPIであるのに対し、④⑤⑥はソフトスキルを評価するKPIであると言えます。
MSLのパフォーマンスを測るKPIにおける内資系企業・外資系企業の共通点や違いを調査したものには、日本製薬医学会MA部会が製薬企業43社(内資系製薬企業26社、外資系製薬企業17社)に対して行った調査2森次幸男、メディカルアフェアーズ / メディカル・サイエンス・リエゾンの組織構造と医療貢献、医薬品情報学、2022、24(1)、38-65があります。この調査ではMSLのパフォーマンスを測るKPIについての設問は、39社(内資24社、外資15社)から回答されました。「キーオピニオンリーダー(KOL)/キーソートリーダー(KTL)への訪問・コンタクト数」は82.1%(内資75.0%、外資93.3%)、「KOL/KTLからの情報収集数」は79.5%(内資75.0%、外資86.7%)と内資・外資を問わず多くの企業に挙げられていました。一方で、「医師自主研究(医師主導臨床研究)のサポート数」は30.8%(内資50.0%、外資0%)、「社内企画臨床研究・HEOR(Health Economics and Outcomes Research)・RWE(Real-World Evidence)の計画・実施数」は20.5%(内資29.2%、外資6.7%)、「論文投稿数」は20.5%(内資33.3%、外資0%)の企業にKPIとして挙げられており、とくに「医師自主研究(医師主導臨床研究)のサポート数」は、内資では外資に比べて回答が有意に多かった(p<0.05)と報告3森次幸男、メディカルアフェアーズ / メディカル・サイエンス・リエゾンの組織構造と医療貢献、医薬品情報学、2022、24(1)、38-65されています。
- 1日本製薬工業協会 医薬品評価委員会MA部会、メディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)の目指すべき方向性、日本製薬工業協会ホームページ、2022年、https://www.jpma.or.jp/information/evaluation/results/allotment/gbkspa0000000sa4-att/MA_202207_msl.pdf、2024年4月10日
- 2森次幸男、メディカルアフェアーズ / メディカル・サイエンス・リエゾンの組織構造と医療貢献、医薬品情報学、2022、24(1)、38-65
- 3森次幸男、メディカルアフェアーズ / メディカル・サイエンス・リエゾンの組織構造と医療貢献、医薬品情報学、2022、24(1)、38-65