プロダクトライフサイクルを見据えた「成長期」のエビデンス創出活動

データベース研究の実現可能性の評価

 まず、データベース研究の実現可能性を評価します。データベースには、レセプトデータベースと電子カルテデータベースが存在しますが、費用効果分析のためのデータベース解析では、実際の診療行為でかかった医療費を算出するため基本的にはレセプトデータベースを用います。レセプトデータベースにはレセプトの収集先の違いから保険者データベースと医療機関データベースがあるため、対象集団として高齢者を取得可能か、転院した後も同じ患者として追跡が可能か、といったレセプトデータベースごとの違いを考慮し、解析の目的に合わせてデータベースを選択する必要があります。さらには、検査値で対象集団が決まるといったように、取得したい値によっては電子カルテデータベースとレセプトデータベースの突合が必要となる場合もあります。候補とするデータベースに対象とする疾患を有する患者や診療行為を受けた患者がどの程度存在するか、解析対象とする項目がデータベースに記録されているかの確認をおこない、最終的に使用するデータベースを選定します。

製品Aの場合、データベース解析の目的は早期処方群と非早期処方群の長期イベントの発生と費用対効果を比較することでした。そのため、レセプトデータベースを対象として製品Aの適応症を有し実際に処方された患者数や、長期イベントの情報の取得可否を確認しました。十分な患者数が得られ、かつ転院後も同一患者を追跡して長期イベントを把握できる保険者データベースを選定しました。

データベース解析

使用するデータベースを選定し、データベース提供業者よりデータを入手したら、実際に解析をおこないます。解析において、早期処方群と非早期処方群の患者背景に偏りがある場合は、アウトカムの集計前に背景マッチングをおこなって偏りが研究結果に影響を与えるリスクを最小限に抑える必要があります。解析結果の解釈には、データベースに特有のバイアスが存在することに留意する必要があります。製品Aの場合、条件に合致する患者を抽出して早期処方群と非早期処方群に分け、処方開始日以降のイベントの発生率やイベントに伴う費用を算出しました。

QALYの取得とICERの算出

費用対効果をICERで求める場合、費用のほかに質調整生存年(QALY:Quality-Adjusted Life Year)の情報が必要です。QALYの算出にはEuroQol 5-Dimension 5-Level (EQ-5D-5L) や Short Form-36 Health Survey (SF-36)といったQOL尺度が使用されます。すでに先行研究の中で調査された結果が使用できる場合はその値を使用することができますが、先行研究がない場合は新規にアンケート調査を実施してEQ-5D-5LやSF-36を聴取します。製品Aの場合、EQ-5D-5Lを聴取した先行研究があり、その報告値を使用することができました。

上記の結果を統合してICERを算出したところ、事前の仮説の通り製品Aは早期処方することで費用対効果が改善するという結果が得られました。

エビデンス創出後の情報発信

分析から得られた結果を適切な形で医療従事者に向けて発信するため、学会発表や論文発表をおこなうこととしました。研究結果の臨床的な解釈については、Key Opinion Leader(KOL)とのメディカルアドバイザリーボードを設定してアドバイスをもらうこととしました。学会発表や論文発表した結果をさらに多くの医療従事者に製品Aを認知してもらうため、デジタルを活用した情報発信もおこないました。