メディカルアフェアーズ(MA)部門の活動に関連する規制には、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)、臨床研究法などの法規制、医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン、公正競争規約、製薬協コード・オブ・プラクティスなどの業界団体による自主規制などがあり、さらには社内基準や手順書などを遵守して1日本製薬工業協会、メディカルアフェアーズの活動に関する基本的考え方、日本製薬工業協会ホームページ、2019年、https://www.jpma.or.jp/english/reports/drug_evaluation_committee/eplg5k0000000ekc-att/ma-jp_20190401.pdf、2024年4月26日、適切に活動しなければなりません。ここでは各種の規制やガイドラインに基づき、医学・科学的情報を発信・提供する上でMA部門が留意すべきことを取り上げます。
MA部門が情報提供において留意すべきこととは
MA部門が行う情報提供は、主に「社外医科学専門家からのアンメットメディカルニーズやインサイトの取得等を目的とした情報提示」と「社外医科学専門家等に対して自社医薬品に偏らない疾患領域全般に関する理解促進を目的とした情報提供」の2種類に大別されます2日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 メディカルアフェアーズ部会、メディカルアフェアーズ部門が行う『医学・科学的情報提供』に関する手引き、日本製薬工業協会ホームページ、2022年、https://www.jpma.or.jp/information/evaluation/results/allotment/jtrngf00000008wb-att/KT5_MA_202212.pdf、2024年4月26日。どちらの場合においても、MA部門は自社製品の販売活動からは独立した立場であることを常に留意する必要があります。
提供できる情報は「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン3厚生労働省、医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン、厚生労働省ホームページ、2018年、https://www.mhlw.go.jp/content/000359881.pdf、2024年4月26日」に定められるように、国内で承認された範囲内が原則です。しかし、「MA部門による情報提供の質の担保」でも取り上げたように、医療従事者から求めがあった場合には、承認された医薬品の情報だけでなく、医薬品の適応外使用に関する臨床研究や国内未承認・適応外薬についての情報を提供することが可能です。未承認薬・適応外薬等に関する情報提供は、多くの製薬企業がMRからの提供は不可との社内ルールを定めており、MA部門/メディカルサイエンスリエゾン(MSL)がその業務を担うことが多く、販売活動であるとの誤解を避けるため、医薬品には一般名を用いるよう留意します。
医療従事者への情報提供や医療従事者との情報交換を目的として面談をする際は、販売活動と誤解されないようMRの同席は避け、MA部門とMRは別日時で医療従事者のアポイントを取ることが望ましいといえます。また、安全性情報や医療従事者の治療方針などについてMRと情報交換はしても、販売目的で情報共有することは避けるべきでしょう。
なお、自社製品承認後の情報提供資料の作成にも一定のルールがあります。MSLに関するガイドライン4EFPIA Japan、EFPIA Japan MSL ガイドライン Ver.01、EFPIA Japanホームページ、2017年、https://efpia.jp/link/Final_EFPIA_MSL_Guideline_201710_J.pdf、2024年5月9日では、承認後のプロアクティブな情報提供で使用する説明資材は販売活動との誤解を避けるため、MA活動の目的に合致した資材を制作し、社内審査を受けて承認されなくてならないこと、と記載されています(「MAによるメディカルマテリアルの制作」を参照)。
また、医薬品の開発段階の業務で国内未承認・適応外薬の情報を扱う場合はGCP(Good Clinical Practice)その他関連法令を遵守します。医薬品の承認前においては、医学的、薬学的、その他科学的観点から、国内未承認・適応外薬の情報を用いて医療従事者と意見交換ができますが、情報収集の目的を明確に示すと共に、意見交換の内容について記録を作成する必要があります。このような場合においても未承認医薬品の販売活動との誤解を避けるため、医療従事者に対してプロアクティブな情報提供活動を行ってはいけません。特に情報量が多くなり、またコミュニケーションの機会が増える承認申請期間中には、より一層配慮する必要があります。
講演会やその他イベントによる情報提供を企画・運営する際には、テーマとする疾患領域の医薬品に言及する場合でも、自社製品のみに偏った説明とならないように留意します。さらに自身が講演を行う場合、自社製品の販売活動につながる内容で講演することはできず、医学的、薬学的、科学的知見を公平な立場で提供するものとします。海外の講師に講演を依頼する場合には、諸外国や国際ルール(各国ガイドラインやIFPMAのコード・オブ・プラクティス5IFPMA、コード・オブ・プラクティス、IFPMAホームページ、2019年、https://www.ifpma.org/wp-content/uploads/2023/01/i2023_IFPMA_Code_of_Practice_2019_JP.pdf、2024年5月9日など)を確認し、講演料の金額などについては特に注意する必要があります。そのほか、メディカルアドバイザリーボードを開催する上での注意点などは「メディカルアドバイザリーボードの進め方」を併せてご確認ください。
- 1日本製薬工業協会、メディカルアフェアーズの活動に関する基本的考え方、日本製薬工業協会ホームページ、2019年、https://www.jpma.or.jp/english/reports/drug_evaluation_committee/eplg5k0000000ekc-att/ma-jp_20190401.pdf、2024年4月26日
- 2日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 メディカルアフェアーズ部会、メディカルアフェアーズ部門が行う『医学・科学的情報提供』に関する手引き、日本製薬工業協会ホームページ、2022年、https://www.jpma.or.jp/information/evaluation/results/allotment/jtrngf00000008wb-att/KT5_MA_202212.pdf、2024年4月26日
- 3厚生労働省、医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン、厚生労働省ホームページ、2018年、https://www.mhlw.go.jp/content/000359881.pdf、2024年4月26日
- 4EFPIA Japan、EFPIA Japan MSL ガイドライン Ver.01、EFPIA Japanホームページ、2017年、https://efpia.jp/link/Final_EFPIA_MSL_Guideline_201710_J.pdf、2024年5月9日
- 5IFPMA、コード・オブ・プラクティス、IFPMAホームページ、2019年、https://www.ifpma.org/wp-content/uploads/2023/01/i2023_IFPMA_Code_of_Practice_2019_JP.pdf、2024年5月9日
この記事はメール会員専用の記事です。
メール会員登録すると続きをお読みいただけます。