臨床試験に関する知識

臨床研究の分類

臨床研究は、臨床試験(介入を伴うもの)と観察研究(介入を伴わないもの)に大別されます。臨床試験では、被験者に対して特定の医療行為を試験的に行い、その有効性や安全性を検証します。その中でも、新たな医薬品の承認や適応の追加などを目指した臨床試験が治験となります。一方、観察研究では、通常の医療行為を受けた患者さんの診療記録やアンケートデータを利用して実態を検証します。

臨床研究とメディカルアフェアーズ部門

臨床研究には、医薬品のライフサイクルマネジメントの観点で主に以下の2つの側面があります。

  1. 医薬品の承認や適応の追加などを目指した臨床試験(治験)
  2. 医薬品の製品価値の向上のためのエビデンス創出を目指した臨床研究(治験以外の臨床試験および観察研究)

メディカルアフェアーズ(MA)部門は、医薬品のライフサイクルを通じた製品の価値最大化を目的にメディカルプランを策定し活動していくことになります(「メディカルプランの目的②-製品の価値最大化とは」を参照)。上記の内、主に関わるのは上市後の実臨床の状況を踏まえてエビデンスを創出する②と考えられ、エビデンス創出の事例については、「リアルワールドデータ活用事例」にて紹介しています。上市後が活動の中心であるものの、製品価値を最大化するためには、開発段階からのエビデンス創出計画も重要となります。そのためには、治験で得られるデータを最大限に有効活用するだけでなく、治験で取得するべき評価項目を提案することなども役割となります。

治験で取得するべき評価項目の提案事例

治験で取得するべき評価項目の提案の例として、費用対効果評価制度対応を見据えた生活の質(QOL)評価項目が挙げられます。費用対効果評価制度は、中央社会保険医療協議会での議論を踏まえ、2019年4月から運用が開始されました。市場規模が大きい、または著しく単価が高い医薬品・医療機器が評価の対象とされており、評価結果は保険償還の可否の判断ではなく、保険収載された後の価格調整に用いられます1厚生労働省、令和2年9月16日第130回社会保障審議会医療保険部会 参考資料1 費用対効果評価制度について、厚生労働省ホームページ、2020年、https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000808909.pdf、2024年5月23日

費用対効果評価制度が製品価値に与える影響は大きいため、MA部門はメディカルプラン策定時に費用対効果評価制度のことを十分考慮する必要があります。上市予定の新薬が費用対効果評価制度の対象品目に指定される見込みの場合、同制度への対応が求められることになり、指定されてからでは準備期間が足りないため、開発と並行して、制度対応のためのデータを戦略的に集めることが必要になります。