ガイドラインに関する知識

UMNの把握に必要な前提知識

製薬企業のメディカルアフェアーズ(MA)部門が担う業務の一つとして「アンメット・メディカル・ニーズ(UMN)の把握」があります。現在の診療状況とUMNを把握することで、潜在的なリスクや市場規模が明らかになり、医薬品の開発余地に注目することが可能になります(詳細は「UMN把握の目的」の項 をご参照ください)。

UMNを把握するための手法はさまざまですが、まずは基本的な疾患・治療方法・薬剤に関する情報を収集し、前提知識として理解する必要があります(詳細は「疾患に関する知識」、「治療方法に関する知識」および「薬剤に関する知識」の項をご参照ください)。

ここでは、それらすべてに対応する情報源として挙げられる診療ガイドライン(clinical practice guideline)について解説します。

診療ガイドラインの定義

MA部門として診療ガイドラインを信頼すべき情報源として扱うために、その定義や成り立ちを改めて確認しておきましょう。

一般的にガイドラインとは大まかな方向性を示す指標またはその文書を意味する用語ですが、医科学領域における診療ガイドラインは、「健康に関する重要な課題について、医療利用者と提供者の意思決定を支援するために、システマティックレビューによりエビデンス総体を評価し、益と害のバランスを勘案して、最適と考えられる推奨を提示する文書」と定義されています1公益財団法人 日本医療機能評価機構、Minds ガイドラインライブラリ、公益財団法人 日本医療機能評価機構ホームページ、https://minds.jcqhc.or.jp、2024年5月20日 2Minds診療ガイドライン作成マニュアル編集委員会、Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver. 3.0、公益財団法人 日本医療機能評価機構ホームページ、2021年、https://minds.jcqhc.or.jp/docs/methods/cpg-development/minds-manual/pdf/all_manual_.pdf、2024年5月20日

診療ガイドラインの作成および普及は厚生労働省委託事業(EBM普及推進事業)として、公益財団法人 日本医療機能評価機構により運営されており、本事業はMinds(Medical Information Distribution Service)の通称で知られています。

診療ガイドラインデータベース「Mindsガイドラインライブラリ」において、2024年5月時点で598件の診療ガイドラインが登録され3公益財団法人 日本医療機能評価機構、Minds ガイドラインライブラリ、公益財団法人 日本医療機能評価機構ホームページ、https://minds.jcqhc.or.jp、2024年5月20日、外部リンクを含めた本文の掲載(掲載交渉中も含む)または書誌情報が掲載されています。但し、本データベースにすべての診療ガイドラインが掲載されているわけではないため、自身の扱う疾患については関連学会のホームページも併せて確認するとよいでしょう。